8兆円のインバウンド市場を獲得せよ!~地域観光商品とB2B商談会~ 画像 8兆円のインバウンド市場を獲得せよ!~地域観光商品とB2B商談会~

インバウンド・地域活性

■8兆円のインバウンドマーケット、指をくわえて待っていてはいけない

 観光庁の統計によると、2016年に日本を訪れる外国人旅行者は約2,400万人、その外国人旅行者が日本旅行中に消費した金額は1人平均で約16万円、総額で約3兆7千万円の観光商品(宿泊費、飲食費、国内での交通費、娯楽費、お土産購買等に使ったお金。航空券は含まない)が日本で消費されているという。政府は外国人旅行者の数を4,000万人、外国人一人当たりの消費額を20万円に引き上げようという数値目標を掲げており、消費総額は現在の2倍以上の8兆円になる。この8兆円は誰のものか? これは日本国内の各観光事業者、つまり上記の宿泊業、飲食店、小売事業者(お土産・物産)、地域交通事業者、コト消費提供事業者たちを指すのである。

 今、日本中の観光事業者たちは、この8兆円のパイをより多く獲りにいこうと、外国人観光客を地域に呼び込むPRを行い、外国人が好む観光商品やサービスの企画開発に挑んでいる。ちなみに日本人の国内旅行を加えた日本における旅行消費額は25.8兆円。内、外国人観光客の消費は14.5%に過ぎないが、外国人比率は年々増加しているのに対して日本人の消費総額はここ数年、ほぼ横ばいで推移している。これが訪日外国人旅行者のインバウンド消費を狙いに行くべき理由である。【図1】

 インバウンド観光で地域を潤すということは、外国人旅行者が好む地域の観光商品を創って売ることである。売る商品がないことにはPRもマーケティング何もない。リピーター化している外国人旅行者は「もっと日本的体験」を求めて、従来のゴールデンルートを外れ、どんどん日本の地方に入りこもうとしている。「うちの地域は平凡な田舎で特に風光明媚な観光地も名産品もなく、外国人が喜ぶような観光コンテンツは何もない」と嘆いている場合ではない。なければ今からでも作ればいい。一見何ら特徴がないような地域に外国人観光客が押し寄せている事例はいくらでもある。

 【図2】を見ていただきたい。これは観光庁が調査した、平成28年の訪日旅行者の「旅行手配方法」と「申込方法」を調査したものだ。これによると、国籍・地域別・全体で70.7%の訪日旅行者が個別手配であり、63.7%の訪日旅行者がウェブサイトから申込んでいる。そしてこの傾向はアジアの旅行者ほど高い。これが「訪日旅行者(特にアジア各国の)対策は、FIT旅行者をネットで狙うのが鉄則」という理由である。

■B2Cマーケティングの限界と「売ること」に徹するB2B商談会

 旅行販売には2つの販路がある。B2C(ネットを使った直販)とB2B(海外現地の旅行会社との商談をベースにしたホールセール)だ。現在のインバウンドマーケティングの主役で大きな予算を執行している自治体の観光施策は、「自分たちの地域を知ってもらうこと(認知向上)、行きたいと思わせること(ブランディング)」という情報発信やPRが主たる施策であり、地域の観光商品の販売は行わない。自治体自らが観光商品を販売してしまうと、税金を使って特定の観光事業者を支援する形に見えてしまうからだ。自治体の観光業務を支援するWEBマーケティング会社にとっては、受託した業務の数値目標はホームページのアクセス数やSNSのファン数であり、観光商品の販売金額とはならない。これが自治体のB2C観光マーケティングの限界である。

 それに比べて、B2Bは海外の旅行会社(バイヤー)に自分たちの観光商品を購入して(仕入れて)もらわなくてはならないので、嫌が応でも「売ること」と真正面から向き合うことになる。地域の観光行政と観光事業社たち(宿泊、交通、飲食サービスなど)が入念に打ち合わせを行い、海外バイヤーに自分たちの地域の魅力を伝え、より良い条件で地域の観光商品を販売契約を結ぶのだが、この難易度がすこぶる高い。交渉は英語が基本である上、多額の海外出張費用をかけて海外の旅行会社を何件も足で回って販売契約を結べても、実際にその国の旅行者が自分たちの観光商品を購入して旅行に来てくれないことには成功とは言えない。成果はすべて数字で見えてくる。

 これからの訪日旅行マーケットは、アジアからの旅行者がだんだんと頭打ちになり、訪日実績の少ない未開拓の欧米豪や富裕層への対策が本格的になる。このマーケットの対応も今まで同様にネットでの情報発信やSNSの口コミ拡散に頼る一辺倒で良いのだろうか。アジア新興国では経済の成長とネットの普及が重なり、一気にB2C直販がマーケットを席巻したが、欧米豪の旅行業界の歴史は長く、まだまだマーケットに対して大きな影響力を持っている。B2Bの基本は物販と同じで、手間はかかるが良好な信頼関係を構築する努力を続ければ、長期にわたり確実に自分たちの地域に観光客を呼び込める施策となる。

 ここでは、B2B対策として効率の高い海外バイヤーが集う旅行商談会イベントを活用した販路拡大について概要を説明したい。折しも、先月9/21-24は世界最大級(※主催者によるキャッチコピー)の旅行イベント「ツーリズムEXPOジャパン2017」が開催された。このイベントは日本人の海外・国内旅行需要を喚起するB2C向けの旅行イベントとして発足したが、昨今の国内観光事業者のインバウンド需要の高まりに合わせて、今年はJNTOが主催する「VISIT JAPAN Travel & MICE Mart 2017」が合同開催として加わり、ツーリズムEXPOジャパンの課題であった日本の観光事業者と海外バイヤーをマッチングさせるB2B商談会が強化された形となった。

「VISIT JAPAN Travel & MICE Mart 2017」の参加社数は以下のとおり。

 <海外参加者>
 ・海外バイヤー:約400社
 ・MICE:29社(前年比+6社)
 ・海外メディア:17社(前年比+7メディア)

 <国内セラー>
 ・一般セラー(観光サプライヤー) 513社(前年比+113社)
 ・MICE 30社(前年比マイナス1社)
 ・PRセラー 34社(前年比+15社)

 このように、海外バイヤーが参加する旅行商談会を活用すれば、海外各国の旅行会社を1社1社回らなくても効率的に自らの地域の観光商品を売り込むことが可能となる。日本ではまだ海外バイヤーが数多く参加する旅行商談会の開催は少ないが、京都や東京での開催実績のあるILTM(International Luxury Travel Marketの略で、世界の富裕層旅行をテーマにした商談会)や、北海道のスキーリゾート事業者対象にした「Hokkaido Snow Travel Expo」のように特定の地域のB2B旅行商談会の開催は増加傾向にある。



《三浦 真/HANJO HANJO編集部》

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