外食産業の生産性向上~エヴァンジェリストからの提言(前編) 画像 外食産業の生産性向上~エヴァンジェリストからの提言(前編)

IT業務効率

 9月に入って「食」に関わるイベントや展示会が目白押しだ。秋が来るたびにイメージとして浮上してくる「食」だが、こと外食産業に限って言えば、長く低迷が続いてきた(今年6月にようやく市場規模が14ヶ月ぶりに前年比プラスになった)。その主な要因は、このところ顕著となっている食の安全性への疑義、過酷な労働環境によるイメージ低下、そして人材不足をあげることができるが、やはり最も大きいのは人口減少と少子高齢化の影響だ。

 現在、日本経済のテーマとなっている「サービス産業の生産性向上」、ここに市場規模において狭義で25兆円、広義で31兆円近い外食産業が含まれていることはもちろんだが、この巨大産業が生産性について積極的に取り組まなければ、日本全体の生産性向上にはつながらないとも言えるはずだ。

 ではどうすれば外食産業がその目的に到達することができるのか? 9月22日の記事に引き続き、さらに詳しい話をホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリスト、竹田クニ氏に聞く。

■生産性と効率化はイコールではない

――生産性と効率化は違う、ということを竹田さんは強調されていますね。機械化やセントラルキッチン導入で生産性が上がったと思い込んでいる事業者が多そうですが。

 生産性と効率化というのは似て非なるものである、といつも強調しています。解釈として生産性は「アウトプット/インプット」という分数で表すことができます。これは投入した経営資源に対して、どれだけの利益を生み出せたかということです。例えば国の指標で言う「労働人口に対するGDP」といったようなものです。つまり合理化や効率化というのは分母(インプット)の概念であり、これだけでは生産性につながらないのです。

 分子(アウトプット)の概念としては、メニュー(調理・提供方法)、食材の質やストーリー、空間の魅力などの付加価値が該当します。合理化・効率化によってインプットを小さくし、同時にアウトプットとなる付加価値を高める。これが「生産性の向上」の正しい考え方なのです。

 「失われた20年」という不景気が長く続き競争が激しい時代がありました。頑張っても利益(アウトプット)が増えない。そこで分母である効率化、合理化、具体的には機械化、人員削減、セントラルキッチンや外注の活用などに取り組んだ結果、売上は苦しいけれどどうにか利益を出せるようになりました。これ自体は先人の知恵であり素晴らしいことだと思います。しかし、分母に注力することが、分子である付加価値を削ってしまったわけです。例えば冷凍食品や安い海外の食材を使えば手間もコストも抑えつつ利益を出すことができますが、付加価値である料理のクオリティを下げてしまう。さらに、行き過ぎた合理化は食品偽装や長時間労働という問題も引き起こしてしまったわけです。

 皮肉なもので「失われた20年」の中で、日本が得意とする工業生産的アプローチや真面目で質の高い労働力が生産性向上を阻止してしまったのです。

――竹田さんは著書『リクルートの伝道師が説く外食マーケティングの極意』の中で「遅れてきた産業革命」という言葉を使われています。近年の革命のひとつは「IT化」ですが、外食産業においてなぜITの導入が遅れたのでしょうか?

 外食産業のIT化が遅れた理由は3つあります。一つ目が「コストとリテラシーの問題」、二つ目が「外食特有の商習慣」、最後が「現場オペレーション優先」です。

 まず「コストとリテラシーの問題」ですが、少なくとも2000年代初頭までの会計システムは非常に高額でした。中小企業にとってそんな高いシステムは買えないし必要なかったんですね。また飲食店にシステムを使えるような人がいなかったというのも大きな理由です。

 二つ目の「外食特有の商習慣」。外食産業は仕入れにおいて電話やFAXでのやり取りがまだまだ普通に行われています。これはイレギュラーにも柔軟に対応できるため便利なんですね。そのためシステムで発注するということ自体に必要性が薄かったわけです。

 そして三つ目の「現場オペレーション優先」ですが、サービス業は客商売ですから経営資源をどこに投入するかといえばバックヤードよりも調理・接客が最優先となります。また高度な経営マネジメントをやろうとすると現場オペレーションの変更など負荷が大きいため、どうしても優先順位が下がってしまうんです。

 これら3つの理由から外食産業のIT化が遅れたと私は考えています。

■「街」を捉えることでニーズやウォンツを知る

――外食産業にとって生産性向上というテーマはどう理解されていますか?

 今なぜ生産性向上が叫ばれているかというと、人口減少・少子高齢化という未曾有の社会変化の中で、GDPの7割を占めているサービス産業の生産性を上げ、収益性を向上させていかないと日本の国力が低下するという問題があるからです。そのためには長時間労働や低賃金という業界課題を解決しながら、高い付加価値を提供できる産業として生まれ変わらなければなりません。


《HANJO HANJO編集部》

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