<シリーズ> 陶磁器産業復活のシナリオ (解決戦略編) 画像 <シリーズ> 陶磁器産業復活のシナリオ (解決戦略編)

インバウンド・地域活性

 HANJO HANJO の新シリーズは、コラムでおなじみの水津陽子さんがひとつの業界にしぼって徹底取材。その現在と展望についてを、課題分析編、解決戦略編、具体事例編など複数のパートにわたり深い視点で切り込んでいきます。シリーズ第1回で取り上げるのは落ち込みの激しい「陶磁器産業」です。Vol.2ではその復活のシナリオを描きます。

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<シリーズ> 十年で6割超の市場を失った陶磁器産業
【解決戦略編】目の前の好機に乗れない業界の突破口とは?


 この十年で6割超の市場を失った陶磁器産業。人口減少により国内市場の縮小が進む中、産業界ではTPP(環太平洋パートナーシップ協定)等をテコにした海外輸出の拡大や成長を続けるインバウンド市場に活路を求めようとしています。

 2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、日本食への注目が高まる中、ジャパンブランドやヘルシー志向の日本食の強みを背景に食品や飲食、農業分野等からも積極的かつ機敏にこうした市場に挑戦しブランドを確立、成功をおさめる地域やプレイヤーが続々と誕生する中、陶磁器業界の反応や動きは鈍く消極的に映ります。

 輸出やインバウンドという千載一遇の好機を目の前にしながら、傍観する姿が目立つ産地や事業者。今回はそこに踏み出せない理由とその突破口を考えます。

■1. 輸出における「コト化」と「オムニチャンネル」

 まず輸出はTPPでタオルやメガネフレーム等の地方産品のほか、陶磁器等の伝統工芸品でも関税が撤廃されることになり陶磁器業界にとってもチャンスといえますが、財務省の「貿易統計2014年」によると日本の陶磁器輸出額は75億円。2010年の73億円からわずかに増加しましたが、ピークの1990年765億円の10分の1にまで落ち込んでいます。

 かつて日本の陶磁器輸出は北米を中心とする欧米需要に支えられていましたが、2000年に90億円を超えていた北米への輸出額は2014年には14億円にまで落ち込み、2008年以降はアジアが最大の輸出先となっています。2000年と2010年の輸出額を比べると中国が522%と高い伸び率を見せていますが、金額ベースでは5億円で国別では第5位に位置。

 独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)が行った「中国における陶磁器製品の市場動向調査(2009年)」では、中国の陶磁器製品の輸入は 国内消費に比して非常に小さいものの、日本製品の占める割合(金額ベース)は年々増加し、中国が輸入する陶磁器製品全体の約2割に達しているとされていますが、この数字をどこまで伸ばしていけるのか。

 気になるのはこの間、2位香港、3位大韓民国、4位台湾の輸出額が減少に転じており、中でも台湾への輸出額は4分の1にまで落ち込み、2000年の2位から大きく後退しています。

 業界からは海外展開できるのは大手メーカーのみという声も聞かれますが、できない理由を並べるだけで議論すら行われない業界の脆弱性も感じます。

 世界でブームを巻き起こしている日本食はすでにローカライズも進展しており、器となる陶磁器を含めた統合的なブラディングや提案にはスピード感が必要ですし、その実現に向けたサプライチェーンの見直しやビジネスモデルの再構築にはこれまでにない連携や横断的コラボ、越境経済圏の形成など、戦略的思考も求められるところです。

 輸出に関しては経営再建中の「たち吉」が2016年3月期、10年ぶりに最終損益の黒字化を達成と発表。1752年創業、陶器販売専門の老舗は2015年投資ファンドの支援を受け、経営陣を刷新。企業価値の向上を図るとともにインターネット販売や海外戦略にも力を入れてきました。

 新経営陣からは安物に走ってブランドを毀損した過去への反省とともに、今後は食生活や余暇の使い方の変化にも目を向け、ライフスタイルの提案をする新たな企業コンセプトも語られています。今後は外国人向けの販売を強化し外国語のECサイトの立ち上げも行う予定とか。これにより今後、陶磁器業界でもオムニチャンネル化の流れは加速するのでしょうか。

 とはいえ、恩恵を受けるには当然そのコンセプトに応える意識やモノづくりが求められます。未だ多くの産地や事業者の意識はモノの製造販売にあり、市場が求めるコト化に対応できていません。器をモノと捉える限り、海外はおろか国内でも未来はなく、生き残るにはブランド価値の向上はもちろん、海外で注目される日本食や日本酒、緑茶などの食や飲料を味わう器として、空間や文化などと一体としてその世界観を魅せる「コト化」への転換を図る必要があります。

 ただ、弱体化する産地や事業者に自助努力を求めるだけでは限界もあります。

《水津陽子》

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