開業わずか1年! 京都で口コミランク3位の旅館、その戦略とは?/京町家旅館 楽遊 画像 開業わずか1年! 京都で口コミランク3位の旅館、その戦略とは?/京町家旅館 楽遊

インバウンド・地域活性

「京町家 楽遊 堀川五条」ーー訪日観光客で賑わう京都に、開業からわずか1年数か月しか経っていない現在(※2017年8月27日)、TripAdvisorのランキング(旅行者の口コミ評価順)で3位にランクされている新参の旅館がある。全7室・定員18名の小さな旅館だが、ここ数ヶ月間の平均稼働率はおおむね9割を超えてほぼ満室状態が続いている。

 慢性的に宿泊が不足している京都には、1泊10万円超の5つ星ホテルから数千円のゲストハウスまでさまざまなタイプの旅館がひしめいているが、楽遊が何故ここまで短期間で高評価を得たのだろうか? HANJO HANJO編集部では2名の共同オーナー(青木氏、野原氏)と、現場の山田マネージャーに話を聞いた。

■観光メディア経営から宿泊ビジネスへ参入

 楽遊の共同経営者である青木氏(株式会社アジア・インタラクション・サポート 代表取締役社長)と野原氏(株式会社メディアポルタ 代表取締役社長)はリクルート同期入社の仲。青木氏はリクルートを退職して大手出版社に転職した後、2012年に起業して、訪日外国人旅行者に特化したメディアビジネス(広告代理店、市場調査、マーケティング支援サービスなど)、および訪日観光客向けの旅行商品を自社で企画販売する旅行会社を展開している。

 野原氏はリクルート退社後、中堅出版社やベンチャー企業にて日本人の海外旅行(アウトバウンド)向けの観光コンテンツビジネスに関わりながら、2006年に「歩くバンコク」等を発行する出版社を設立。2009年には台湾の訪日観光客向けウェブサイト「歩歩日本」をリリース。出版業をメインにしたメディアのビジネスの傍ら、個人的な趣味と実益を兼ねて、台北、バンコク、ホーチミンで日本人向けのゲストハウスの運営にも関わってきた。

 この二人がメディア業を通じて共通して感じたのは以下の2点。

・観光による地域振興を考えると、単にメディア運営による情報発信だけでなく、自ら質の高い観光商品プロパティ(=宿泊施設やツアー主催)を主宰して自ら実践する=外部から集客して地域にお金を落とす仕組みを回すことに価値がある。
・訪日観光客向け宿泊施設は供給不足が続いている、この状態は今後も続くだろう。

 二人は自己資金を出し合う共同オーナー兼経営者として、京都で本物の京町家旅館をやろうと決心。設計・施工は伝統的な京町家の再生保存を唱える設計士・大工・左官の集団「京町家作業組」に依頼して、2016年6月17日、京都の中心地(下京区柿本町)に「京町家 楽遊 堀川五条」が開業した。

●こだわった立地とデザイン
・場所は京都の中心地(下京、中京、東山の都心3区)であること
・銭湯が近くにあること(客室風呂が狭い、外国人観光客に喜ばれる)
・本格的な京町家仕様(出格子、犬矢来、揚げみせ、通り庭、火袋、坪庭など)にこだわり、外装は焼き杉板と漆喰の壁、土間は三和土

●客室仕様
・6畳(定員3名)が4部屋、4畳半(定員2名)が3部屋の計7部屋(定員18名)
・全室にTV、ミニ冷蔵庫、セーフティボックス、バス、トイレを完備
・贅沢ではないが、上質なものを地元京都のメーカーから調達した
 ー館内着はダブルガーゼ作務衣(岩本繊維)
 ー座布団はセミオーダー(洛中高岡屋)
 ーウエルカム器・茶器(うつわhaku)
 ー花入れ・かご(公長齋小菅)
 ー照明(三浦照明)
 ー暖簾(四季彩)

●ターゲット
旅慣れた個人旅行の(外国人)旅行客を想定。富裕層でもバックパッカー(倹約型旅行者)でもない、一般的な中流層を対象にしている。

●開業に際して気をつけたこと
・完全な合法であること
旅館業法や建築基準法など必要な合法的措置はすべてクリアにして、グレーな部分を一切残さないこと。その結果、年間に数件ほどしか認められていない旅館営業許可を申請時に取得することができた。

・京都と近隣にとけ込むこと
施工前から近隣の方々への丁寧な挨拶、オープン前の近隣の方々への内覧会の実施、町内会にも加盟して町の行事には積極的に参加するなど、町に溶け込むことを心がけている。京都コンベンションセンターなど京都府の観光行政とも良好な関係を構築し、京都市の意向に沿って近隣の方々の親しみやご協力をいただける関係づくりを重視している。

・日本人も満足する本当の快適な日本の京町家の宿。対象は「中流階層」。
現在の利用者は(結果として)訪日外国人の利用が多いが、国籍を問わず日本人を含めた旅慣れた中流旅行者を対象にしている。訪日外国人向けの宿には「なんちゃって日本」な表面だけ日本的な宿も散見されるが、京都で、本格的京町家として日本サービスだからこその清潔さを心がけ、個室でプライバシーや自由度の高い空間の提供を意識している。

 二人の経営者は揃って「旅行メディアに携わったからこそ、旅行者への必要に応じたきめ細かい地元案内が重要だと考えています」と語る。

「ただ建物だけを用意して外国人客に貸すだけではリピート客の確保につながらないと思っています。宿は旅行者にとってただ単に寝るだけの場所ではなく、旅に必要ないろいろな情報を仕入れる情報源であり、土地の文化を知る場所です。人と人とが交流すること、異文化を体験することが外国を訪れる楽しみだと思っていますので、街の良さを情報として提供しながら、街と旅行者を結びつけるキーステーションであることを心がけてます」


《三浦 真/HANJO HANJO編集部》

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