ドラマ「コード・ブルー」が描く「仕事に対する哲学」に共感する 画像 ドラマ「コード・ブルー」が描く「仕事に対する哲学」に共感する

人材

 医療ドラマは今のテレビドラマにおいては刑事ドラマと並ぶヒットコンテンツで、毎クール、必ず一作はあるような状態が続いている。現在、フジテレビ系の月曜夜9時枠(月9)で放送されている『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』も今回で三作目となる人気シリーズだ。

 本作はドクターヘリで現場に赴いて治療をするフライトドクターたちを主人公にした医療ドラマ。病院ではなく災害現場で手術することが多い本作では、リアルタイムで状況が変化していく中で、最良の医療をおこなうことが常に求められる。その様子はさながら戦場の衛生兵のようで、『機動警察パトレイバー』や『新世紀エヴァンゲリオン』といったロボットアニメを見ている時の感触に近いものがある。

 また、医療モノがどうしても、毎回治療が難しい難病をどのようにして手術するかという手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』(秋田書店)以降のパターンに陥りがちなのに対し、本作は難病の手術よりも、もっと違うところに焦点があてられている。それは一言で言うならば、一種の仕事論であり、その延長としての組織論だ。 

 今回は7年ぶりの続編だが、シーズン1とシーズン2の脚本家・林宏司から安達奈緒子へと脚本家が変わったことで、作品のテーマの描き方はより複雑で多角的なものとなっている。

 シーズン1、シーズン2の『コード・ブルー』は、藍沢耕作(山下智久)たちフライトドクター候補生たちがお互いをライバル視しながら厳しい上司の指導を受けて、一人前のフライトドクターになる姿を描いた若者たちの青春譚だった。

 対するシーズン3では、かつての候補生が後輩を育成しながら、どうやって現場を円滑に回していくかという課題が全面化していく。つまり、仕事を憶えながら自分のスキルをあげることに邁進していた新人時代から、全体を見まわして的確な指示を送れるようになるか? という中間管理職の課題を描く物語に変化しているのだ。

 医療モノはどうしても、難病のオペをいかにして成功させるのか? という医者VS病気という話になりがちなのだが、医療モノの中で『コード・ブルー』が独特なのは、登場人物が多く、様々な立場の人々を描くことで、「人が仕事をする」とはどういうことかを追求しているところだろう。

 この辺り、ITベンチャー企業の若社長を主人公に今の時代の仕事と恋愛をポップに描いた『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)の脚本を担当した安達奈緒子ならではだと言える。安達が書くドラマは、月9で書いていることもあって、トレンディドラマ的なライトな作品として見られることが多い。しかし、そこで描かれる仕事と恋愛に対する考えは、実にハードなもので、とても見応えがあるものとなっている。

 例えば、第五話。下水道工事中の作業員を救助に向かい負傷したレンジャー隊員・倉田(大谷亮介)を治療した新人の名取颯馬(有岡大貴)は、倉田の骨盤骨折を見逃して、容態を悪化させてしまう。名取は醒めたドクターで医療に対する情熱は他の医師に較べると弱く、ミスをしても軽口を叩く。そんな名取に白石恵(新垣結衣)は「(患者には)次はないのよ」と厳しく言い放つ。

 救命センターに運ばれてきた倉田は自分の怪我よりも、隣で昏睡状態にある若者を見て、彼を助けられなかったことを深く後悔する。そんな倉田に対して名取は自分の罪悪感を覆い隠すように「自分を責めないでください」と言うが、倉田は「人は起きたことは全て自分の責任だと言い切れる人間に命を預けたいと思うものだ。オレの仕事はそういう仕事だ。ドクターヘリだってそうでしょ」と言う。

 この回は妊娠していたフライトナースの冴島はるか(比嘉愛未)が、仕事中に流産してしまうというハードな展開もあり、作り手の仕事に対する意識が強く出た緊張感のあるドラマとなっていた。

《成馬零一/ドラマ評論家》

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