「コーヒー界のグーグル」が起こす、IT目線の生産性革命(後編)/ABC 画像 「コーヒー界のグーグル」が起こす、IT目線の生産性革命(後編)/ABC

IT業務効率

 先ごろ、東京の自由が丘に気になるコーヒーショップができた。「気になる」中身だが、コーヒーの味やカリフォルニアのトレンドが楽しめるのはもちろんとして、それ以上に「ITによる生産性向上」というビジネス文脈からも極めて示唆的な内容をもっている点に、おおいに興味を惹かれるのだ。そのコーヒーショップの名前は「ALPHA BETA COFFEE CLUB」(アルファベータコーヒークラブ。以下「ABC」)。創業者はアジア系アメリカ人の二人。かつてグーグルのアジア太平洋地域におけるデジタル・マーケティングの責任者を務めた大塚ケビン氏と、サンフランシスコのフードデリバリーサービス「Zesty」で成功を収めたアルヴィン・チャン氏。そして「ABC」のキャッチコピーは「ITの目線」「コーヒー界のグーグル」だ。

 サードウェーブコーヒーなど、いま日本ではかつてないほどのコーヒーブームが起こっている。町を見渡せば、職人技を誇る専門店から大衆的な大型チェーン店まで様々なコーヒーショップがある。そんななか、新たな視点「ITの目線」が投げかける考え方や具体的な方法は、コーヒーショップ経営に関わるひとのみならず、生産性改善を目標とする数多くのサービス業者への力強いアドバイスとなるように思えるのだ。

「ABC」のフィジカルショップ(リアル店舗)でのITの使用法や開発手順、ブランディングやPR方法、そして「ITの目線」からみる日本の生産性向上へのヒントーーこれら3つのテーマに分けてお届けするシリーズ「『コーヒー界のグーグル』が起こす、IT目線の生産性革命」、大塚ケビン氏とアルヴィン・チャン氏の二人の挑戦に注目してほしい。

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【後編:日本の生産性向上のヒントはどこにあるのか?】


■「職人的」にこだわりすぎる店に「効率性だけ」の店。もうひとつの道があるはず

ーー日本のカフェやコーヒーショップで疑問に感じることははありますか?

大塚ケビン(以下、ケビン) お客さんへの関心以上に、コーヒーそのものに注目し過ぎているように思います。もちろん商品へのこだわりは大切ですが、コーヒーが美味しくさえあればお客さんが来るという考え方は、そこから先の将来を難しくするのではないでしょうか。

他にもお店の雰囲気作りを優先させるあまり、お客さんのスペースやサービスが二の次になっていることがあります。コーヒーを淹れる場所が大きすぎるお店も疑問に感じます。

こだわり優先から特別な美味しさが生まれるのは面白いことだし、コアなファンを作ることにつながるのでしょうが、ビジネスの側面で考えると継続性や広がりがなくなる可能性があります。

コーヒーショップではありませんが、ほかの飲食店の成功例をあげてみましょう。ミシュランの三ツ星を獲ったお店でも、三つ星店でお金を儲けているのではなく、ハードルを下げた姉妹店的なお店で利益を得ているのです。

全米一予約が取れないといわれるレストラン「フレンチランドリー」のトーマス・ケラーも、そのお店ではなく他のビストロやカジュアルなホームスタイルの系列店で儲けています。僕たちはそういうやりかたがおもしろいと思っています。

アルヴィン・チャン(以下、アルヴィン) 品質にこだわりすぎて次に進めないお店が多いなか、ビジネスとしてお金を生むのはそういう方法なんです。

ーー一方、日本にはチェーン展開のコーヒーショップはたくさんありますよね。

アルヴィン チェーン店は生産性にこだわり過ぎている。そして商品に至るプロセスがいっぱいありすぎるんです。

ケビン ビジネスシステムを確立したことに敬意は払います。でも残念ながら味は良くありません。

アルヴィン コスト、クオリティ、エフィシェンシー(効率)ーーこの3つのバランスが重要だと思います。チェーン店の問題点はフレキシブルではないことです。たとえばメニューを変えるのも大変です。新しい味を追いかけようとしてもスケールが大きすぎるんですね。

■プロセスにはこだわらない。アウトプットを作ることがゴール

ーー会社を立ち上げる前にどんなリサーチをしましたか?

アルヴィン オンラインで色々と調べました。日本はラッキーな環境でした。スペシャリティコーヒーのデータがネットにいくつもありますし、各地の焙煎所のネットワークもあります。

ケビン 大きな分析もやりましたが、最初は友達くらいのレベルから始めて、そこからフィードバックを重ねて成長してきました。そこで得た情報からサービスも改善していきました。ある種の実験を重ねてきたわけです。

「やらないと何が正しいのかはわからない」、それがスタートアップ企業の考え方です。なぜなら考えてもわからないことが多いし、それ以前に根本が間違えているデータを使っている場合もあります。そんなことは日常茶飯です。

まずできるだけ早く、実験したことのアイディアが間違えていないかを確認する。何回も繰り返すことでアイディアの正誤がみつかりやすくなります。たくさんの準備をして開発に時間をかけても、初めのアイディアが間違えていたならば、その時間は無駄になってしまいます。早くスタートして、その後調整していくのが効率的なのです。

アルヴィン 僕たちは「フィードバックスタイル」と呼んでいます。これは「カイゼン」とは異なります。カイゼンっぽいのですが、もっとスモール。ダイナミックなカイゼンとは違います。コストはどう? お客さんはどう感じているの? といったような、もっと手前のカイゼンですね。そして重要なのはプロセスにこだわらないという点にあります。

ケビン 自分たちの作った商品がお客さんにフィットしているのかどうかを確かめるのが、まずやるべきことです。細かい部分は根本には関係ありません。根本がお客さんに合っているかどうか? カイゼンはその次に始まります。


《加藤陽之/HANJO HANJO編集部》

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