三代目社長のHANJO記:第3話――職人バカになるな! 客にとっての便利を考える/矢場とん 画像 三代目社長のHANJO記:第3話――職人バカになるな! 客にとっての便利を考える/矢場とん

人材

 ビジネスにおけるジンクス「苦労を知らない三代目が会社をつぶす」。だが一方で、改革を進め会社を成長させる三代目社長がいる。「三代目」を名乗るダンス&ボーカルグループがヒットチャートを席巻するいま、時代が三代目の活躍を求めているのかもしれない。連載「三代目社長のHANJO記」では、新たな発想やマネージメントで歴史をつなぐ中小企業経営者の姿を伝える。第3話は、名古屋で有名な「矢場とん」三代目 代表取締役社長 鈴木拓将氏に話を聞く。

 矢場とんは、名古屋名物グルメのひとつ「みそかつ」専門店。国内23店舗、台湾にも2店舗を展開する老舗である。もともとは串カツをメインとした大衆食堂として経営していたが、2代目のときにとんかつ専門店にした。バブル崩壊後、きびしい時期もあったそうだが、地元グルメであるみそかつが有名になり、現在に至る。

■自分の代で矢場とんがなくなるのはもったいない

 三代目となる拓将氏は子どものころ、父親からは店は継がなくてもいいというような話を聞かされていたという。実際、拓将氏は高校、大学へと行かせてもらっており、両親は無理に店を継がせる意識はなかったようだ。

「地元ではそこそこ名の通った店であり、友だちからの評判も悪くない。子どものころから店にも親しんでいるので、このまま矢場とんがなくなってしまうのはもったいないという漠然とした意識はありました。高校、大学と店の手伝いも自然とするようになっていました。」

 ただし、親子で明確に店を継ぐ継がないの話をしたり議論したわけではなく、拓将氏は大学卒業後、いったんは地元の外資系大手ホテルに就職する。

 しかし、1998年、26歳のとき、母親から改めて店を手伝ってほしいとの依頼があり、将来のキャリアパスを考えた拓将氏。高校のときから意識の中にあった三代目として矢場とんを継ぐことを決意し、ホテルを退職し店に戻ったという。もちろん最初は現場の仕事からだが、店の手伝い経験はあったので、受け入れる側も自然に受け入れたようだ。その意味で、よくある三代目の入社やポストについて巷であるような問題やトラブルはなかったという。

 どんな形で継ぐにせよ、中小企業の場合現場の経験は欠かせないということだ。正式に代表取締役社長に就任したのは2014年。その間、矢場とんでの仕事やポジションが上がるにつれ会社や業務の改革にも着手している。

「ホテルのようなビジネスの場から、矢場とんのような飲食店を見ると、やはりビジネスの 『言葉の違い』は感じました。例えば材料の仕入れも、先に品物を受け取って、支払は1か月営業をして上がった売上の中から代金を支払うような取引でした。感覚としては、1日から10日の売上で従業員の給料を払い、11日から20日の売上で業者への支払をし、といった感じです。労務管理にしてもアルバイトやパートが多いので、悪く言えば学生や主婦を基準にした考え方で、従業員もそれにつられるような形になってしまう。規模も大きくなっているのだから、もっと『普通の会社』としての経営は導入してもいいのかなと思っていました」

■矢場とんならではのサービスで事業を拡大

 三代目が店の意識改革や業務改革を行うというと、大企業で学んだ若旦那が番頭や古参の意見を聞かず改革を断行したようなイメージが湧きがちだが、矢場とんの場合、そういうわけではなさそうだ。あくまでお客さんに喜んでもらえる店舗にするための施策が、帳簿のつけ方や経営戦略の立て方、労務管理だったと見る方が正しい。

 改革に対し、現場からの反発もあり辞めていく従業員も少なくなかったという。しかし、結果的に業務改革、意識改革は成功し、店舗数は10年前から4倍に増え、売上も倍増しているという。その成功の要因を聞くと、拓将氏は次のように語る。


《中尾真二/HANJO HANJO編集部》

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