<シリーズ> 十年で6割超の市場を失った陶磁器産業 (課題編) 画像 <シリーズ> 十年で6割超の市場を失った陶磁器産業 (課題編)

インバウンド・地域活性

■課題1 産地構造と市場の変化

 公益財団法人岐阜県産業経済振興センターでは「陶磁器産業(平成27年度)」において美濃焼の現状を次のように分析しています。

 まず挙げられるのが産地構造変化。大量生産に適した原料採掘から販売まで細分化された分業システムが需要や事業者の減少により立ち行かなくなったこと。加えて陶磁器産業が抱える問題として「食文化や生活様式の変化、家庭内での飲食器の飽和状態などによる内需の減少」と「中国製品などの輸入品の増加がほぼ同時に進行したこと」を挙げています。

 特に美濃焼は中国から大量に流入した安価な大量生産品と競合、2014年の飲食器の輸入金額284億円のうち中国は59.2%、168億円を占め、同年の岐阜県産145億円を大きく上回りました。ただ近年は人件費の上昇と円安の進展により中国製品にかつての割安感がなくなり、2014年kg当たりの価格は岐阜県産が中国産を上回りました。依然として脅威ではありますが、100円ショップ等では徐々に日本製にシフトしているといいます。

 一方、分業・専門化の深化は業界全体を取り巻く環境変化への関心度を低下させ、対応が遅れたという指摘もあります。志野、黄瀬戸、織部といった歴史的名品が揃う「美濃桃山陶」は歴史・芸術的価値は最高峰で、志野や瀬戸黒には人間国宝もいますが、大量生産の美濃焼の認知度は低く、ブランド力はありません。

■課題2 原材料の不足

 一方、近年深刻な問題となっているのが窯業原料の不足です。かつて良質な陶土を産出したことで陶磁産地として発展してきた美濃焼ですが、近年は陶土を採掘する鉱山の閉山や休業が相次ぎ、陶土が自給できず、その多くを県外の産地や事業者に頼るのが現状です。

 生産減と単価下落のしわ寄せが川上の粘土鉱山を直撃、2009年以降主要鉱山が相次いで閉山に追い込まれています。1992年には県内に59の鉱山がありましたが現在稼働しているのは8鉱山のみ、原料の埋蔵量は十分あるものの、食器は瀬戸など県外産に頼っています。ただ土の枯渇化は瀬戸でも叫ばれており、瀬戸では2013年から土の供給制限(従来の2~3割減)を行っています。

 原材料となる陶土は原料メーカーが複数の粘土をブレンド製造しており、鉱山が減少すればブレンドする粘土の多様性が失われ、品質にも影響します。想定される対応策としては粘土ではなく陶石を使用する案や再生原料の使用案などが挙がっていますが、消費者からみると特別な製法を持たず、材料も県外産だとするとそのやきもののオリジナリティはどこにあるのか、差別化される価値が分からなくなります。

■課題3 経営者や職人の高齢化や後継者不足

 また人材不足も大きな問題です。岐阜県には4つの公的なやきものに関する専門機関がありますが、多くは基礎研究や技術に関連するものでデザインやブランディングに関するものは見当たりません。

 やきものの人材育成を行う多治見市陶磁器意匠研究所は1959年に地元の陶磁産業振興目的に設立。デザインコース、技術コースなど3コースを有し、卒業生は800人を超え陶磁器デザイナーやクラフト作家、陶芸家として活躍していますが県出身者はわずか。卒業生が地元に残らないという現状もあります。

 陶磁科学芸術科を有す岐阜県立多治見工業高校には100年以上の歴史があり、人間国宝も輩出していますが、やきもの産業には大量生産の日用品等の工業製品の製造業とは別に、伝統的な技法を守る職人やアート作品などを生み出す個人の作家もいます。

 工業製品は分業化により互いに自分の工程以外は分からず、産地ですら美濃焼を全て把握することは難しく、どこまでを美濃焼と称するかも定まっていません。岐阜の商社が販売するものに中国製品が含まれるなど美濃焼にこだわらない業者もいます。こうした大量生産型の事業者と作家志向の卒業生には当然認識にギャップがあり、美濃焼にこだわらない卒業生も多いといいます。


《水津陽子》

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