<シリーズ> 十年で6割超の市場を失った陶磁器産業 (課題編) 画像 <シリーズ> 十年で6割超の市場を失った陶磁器産業 (課題編)

インバウンド・地域活性

 HANJO HANJO の新シリーズは、コラムでおなじみの水津陽子さんがひとつの業界にしぼって徹底取材。その現在と展望についてを、課題分析編、解決戦略編、具体事例編など複数のパートにわたり深い視点で切り込んでいきます。第1回で取り上げるのは「陶磁器産業」です。

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「生産動態統計年報(資源・窯業・建材統計編)」によると、台所・食卓用品を扱う陶磁器産業の2015年度の生産額は269億円、この十年余りで実に6割超の市場縮小となりました。その主要因として業界では「国内需要の落ち込み」や「中国製品など安価な輸入品の増加」を挙げていますが、本質的な問題はそこでしょうか。

 佐賀県は有田焼が創業400年を迎えるにあたり、2013~2016年度有田焼と外部のデザイナー等との各種コラボや国内外でのPR活動、各種記念事業など17の事業に総額23億円を投じました。有田焼の販売額は最盛期1991年の約250億円から2015年は84%減の約40億円にまで減少。事業では次の100年に向け、「有田焼のリノベーション」や「欧州でのリブランディング」、「世界で活躍する人材の集積・育成」が目標に掲げられました。しかし成果はといえば、輸出額では2013年の4500万円から15年8千万円へ微増するも、佐賀財務事務所がまとめた有田焼主要組合の2015年の共同販売事業の売上高は前年比0.7%減の19億5000万円。今後有田焼はどこに向かうのか、その道筋は今一つぼんやりしています。

■全国シェア5割、国内最大産地にみる陶磁器産業の現状と課題

 陶磁器産業は、1.住宅建設等に用いられるタイル、2.トイレ・洗面台等の衛生用品、3.がい子等の電気用品、4.台所・食卓用品、玩具・置物に大別されます。今回取り上げるのは 4.台所・食卓用品、玩具・置物市場です。

 この分野は小規模な事業者も多く、市場は1990年台をピークに縮小。この十年余りで台所・食卓用品は6割超、玩具・置物は9割近くの市場が失われました。最大の市場である和飲食器の生産のピークは1991年の1295億円、以降25年連続して減少を続け、2015年はピークから76%減となる301億円に減少しました(*表1)。

 日本最大の産地は美濃焼で知られる岐阜県。美濃焼は岐阜県南東部の東濃地方で焼かれるやきものの総称で、特別な技術を指すものではありません。その歴史は7世紀に朝鮮から技術が伝わり今の多治見市などで須恵器が焼かれたことに始まります。

 室町時代には「古瀬戸」、桃山時代には「瀬戸黒」「志野」「黄瀬戸」「織部」などの名物が焼かれた産地として名を馳せましたが、江戸時代には磁器生産に移行。明治以降は国内需要の増加や輸出拡大のため、他産地に先駆け大量産化の技術が普及。製品毎の産地分業化も進み、原料から商社まで分業・フルセット型の産地を形成、多種多様なニーズに応えられる生産販売体制を確立しました。

 2013年の工業統計調査(4人以上の事業所)では台所・食卓用品とタイル製品を合わせた出荷額全体で全国シェア51.9%を占め、モザイクタイル(85.1%)、和飲食器(39%)、洋飲食器(59.9%)で国内最大の産地となっています。

 ただ2012年末現在、県内13の産地にある394の事業者の約9割は食器等の製造を行う小規模事業者です。全国シェアは増加しているものの出荷額や事業所数はピーク時の約4分の1に減少。県内製造業に占める割合は年々減少し、事業所数で6.5%、出荷額で2.3%という現状です。


《水津陽子》

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