地域創生におけるファシリテーターの役割とは? (前編) 画像 地域創生におけるファシリテーターの役割とは? (前編)

インバウンド・地域活性

 地域創生において「ファシリテーター」の存在がクローズアップされている。広義では会議等における「議事進行役」を意味する言葉だが、いまが正念場の地域創生の現場では、その言葉以上の役割を果たすことが求められている。インバウンドや地域おこしなど数多くの課題にファシリテーターはどう向き合えばいいのか? これまでに地域創生のいくつもの場所で活躍してきた渋谷健氏の講演から、地域創生におけるファシリテーターの役割の本質を考えてみたい。

*本稿は6月26日に行われたDBIC(デジタルビジネス・イノベーションセンター)における講演「ファシリテーション入門:地方創生の現実を事例に」を文責=編集部で採録したものです。


■ファシリテーターのシンプルな要点

 ファシリテーターの要点は三つのキーワードでまとめることができます。

 一つ目は「世界にとって必要なことをすること」。そのために深く考えて行動しなければなりません。
 二つ目は「自分にとって夢中になれること」。「世界に必要なこと」を自身の関心事として取り組むべきです。
 三つ目は「純粋に人を信頼すること」。世界に必要であっても夢中になれない場合は、ほかの誰かに託したほうがいい。そのためには周囲の人との信頼関係が大切です。

 信頼関係を築く上で重要なのはコミュニケーションです。素直に「ありがとう」「ごめんなさい」「助けてください」の三つが言えれば大抵のことはうまくいきます。しかしなかなかこういう言葉は口に出せないものです。人間は「これはこういうものだ」という決めつけ、「どうせ無駄だ」という諦め、「それ以上踏み込んだら、自分の何かが崩れる」という恐れを持ちやすいからです。

 これらのキーワードをどう扱い、どう向き合っていくか? その問いに応えるのがファシリテーターとしての重要な役割のひとつです。

■地方創生の現場で見えた“複雑な問題”

 私は2012年ごろから、ある地方都市のプロジェクトに関わりました。地域内で対話を重ね、政策立案のほか事業や地域ブランディングなどの実証実験を行いました。しかし徐々に結果が出始めたとき、私は突然、立場を外される事態に直面することになってしまいました。それまでの成果をほかの方に持っていかれてしまったのです。

 しかも後から来た人は、きちんと仕事を扱えないばかりか、成果を壊していってしまう。その後何が起きたか? なんと失敗は私の責任ということになっていたのです。

 これは私だけのレアなケースだと思われるかもしれません。しかし地方創生やイノベーションの現場に行くとよく起きる話なのです。新しいことに挑戦する人は攻撃の標的にされやすい。特に日本社会では「何をやっているか分からない」という理由だけで叩かれる傾向があります。なぜ新しいことに挑戦する人が攻撃の対象にされてしまうのか? そのメカニズムについて私の考えをお話しします。

 人間は、仕事の顔、プライベートの顔、友だちと一緒にいるときの顔など、複数の顔を持っています。さらに仕事の顔ひとつとっても、上司に向けた顔、部下に向けた顔、同僚に向けた顔、違う部署に向けた顔、取引先に向けた顔……やるべきことの違いによって使い分けています。一人ひとりの「やらなきゃ」がどんどん複雑になってしまうんです。

 自分一人だけの世界であれば複雑さも解決しやすいのですが、周りは「やらなきゃ、やらなきゃ」と思っている人であふれています。一つの社会の中にたくさんの「やらなきゃ」がせめぎあっている状態です。「やらなきゃ」が同じベクトルを向いていれば問題ありません。しかし違うベクトルであれば対立が起こります。そしてその対立がどんどん積み重なっていくと、物事が壊れてしまうのです。

 対立関係が続けば、行動が消極的になってしまう。すると行動の先=仕事の内容が望んでいないものになっていきます。さらには対立関係が目立つようになる。そのときに生じるのは「仕事が思うようにならないのは対立する相手のせいだ」という感情です。責任のなすりつけ合いは他の場所にも波及していきます。一つだった対立が二つ三つと増え、全体としてネガティブな状況が生まれるのです。

 対立が続くと徐々に考えることが嫌になってしまう。思考も感覚もどんどん鈍くなっていきます。「これはこういうもんだ」「仕方ないんだ」と片付けてしまうようになります。「決めつけと諦めと恐れ」が積み重なっていき、知らずしらずのうちに思考停止状態になってしまう。本来の目的を思い出すことも困難になり、どんどん悪循環のサイクルに陥ってしまうのです。


《HANJO HANJO編集部》

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