漁師塾、6次化強化、たまコロ、林業で養鰻/みらい基金採択事業報告 画像 漁師塾、6次化強化、たまコロ、林業で養鰻/みらい基金採択事業報告

インバウンド・地域活性

 農林水産業の振興・活性化をめざして、地域のさまざまな取り組みに支援を行う「農林水産業みらい基金」(以下「みらい基金」)の交流会が7月11日に開催された。みらい基金は2014年3月の設立以来、一般公募から助成先採択まで、これまで3年間、助成事業を行ってきた。会場では、その活動報告として2014年度、2015年度の採択事業4例が成果報告をかねて紹介された。

■三重県の漁師塾で海女さんを育てる

 最初の事例は、2014年度採択事業のひとつ三重外湾漁業協同組合 畔志賀漁師塾の取り組み。発表は同塾塾生の山内和氏が行った。

 志摩市志島地区の漁業は、水揚げ量・額ともに海女漁と刺し網漁がほとんどを占めている。しかし、漁師の技術は親子のみに受け継がれるだけで、後継者不足が問題となっていた。とくに海女の数が減少し2011年には14人ほどになり、高齢化とともに消滅の危機に瀕していた。そこで、地区外からの就業希望者の受け入れを開始した。

 漁師塾は、新規就業者の育成支援のために作られた組織。先輩漁師が漁の技術の他、漁業者間のルールや地元での生活のルールなどを指導・支援するというもの。これにより、地域外から8名の就業希望者を集めて育成を行った。その8名は無事地域に定着しているといい、マニュアルの整備なども進んだ。現在、志島地区の漁業者のうち20代から30代はすべて地区外出身者で40代も半数以上が地区外出身者となっている。

 これにより、当面の後継者問題は解決したが、経験の浅い漁業者は収入の面で不安定という課題も浮かび上がった。経験不足からくる水揚げ額は、最初の1年くらいは50万円程度だという。経験とともに水揚げも上がっていくが、収入不足や休漁期対策として、干し芋(きんこ芋)の製造など農作業を収入源とする取り組みも開始した。みらい基金は、この干し芋、水産物を加工する施設の建設に利用したという。加工場という拠点をつくることで、安定した就業の場、販路の拡大などを進めている。

■停滞した6次産業を再活性化した広島・世良高原

 次の報告は広島県の協同組合夢高原市場による6次産業事業の強化事例。発表は組合理事長 佐古淳子氏。

 広島県の世羅高原は古くからの穀倉地帯だが、90年代後半、高齢化や担い手問題、農地の荒廃、観光客の減少など地方の問題に悩んでいた。そこで世羅町、甲山町、世良西町の三町が中心となり「世良高原6次産業推進協議会」を1998年に設立し、翌99年には世良高原6次産業ネットワークを組織し、「スローフードフェスタ」「フルーツ王国せら高原夢まつり」のようなイベントを開催したり、地元県立世羅高校とのコラボ商品の開発などに取り組んだ。

 2006年には組合の拠点施設「夢高原市場」を建設。イベント、施設・地域のブランド化、担い手の育成などを展開していった。しかし、ネットワーク会員施設の集客も2007年をピークに減っていき、売上も2013年をピークに減少を始めた。

 課題分析の結果、農家民宿を利用したグリーンツーリズムの停滞、新商品開発の停滞、マーケティング不足への対策が必要と判断し、みらい基金の活用を決めた。2014年度に無事採択事業となり、3軒にとどまっていた農家民宿を13軒まで増やし、インバウンド対策、体験プログラムの強化など、グリーンツーリズムのてこ入れを行った。

 また、2016年には新しい加工場を建設しワインを利用した新商品開発にも着手。移動販売車の導入も実現した。さらにFacebookやウェブサイトによる情報発信力、ウェブアンケートによるマーケティング調査にも取り組んでいる。

■知名度アップ戦略でグルメコンテストでグランプリ

 2015年度の採択事業ではグリーンズ北見(北海道)の事例が紹介された。発表者はグリーンズ北見 営業開発部営業課課長補佐 丸山勇太氏。

 北海道の北見地区はじつは、全国の生産量の30%を占める日本一の玉ねぎ生産地である。生産量も多いが、比例してキズもの、変形したものなど「規格外品」も大量に発生する。これらは市場価格維持のため安易に出荷するわけにもいかず廃棄していたが、加工食品として出荷するようにしたという。北見グリーンズは昭和62年に規格外品玉ねぎの加工会社として設立された。

 みじん切りの冷凍、あめ色玉ねぎ(ソテー)、スープなどを業務用として、年間18000トンもの加工品を出荷・販売している。その加工品の中にじゃがいもを使わず玉ねぎだけで作った「オニオンコロッケ」という商品もあった。試食などではおいしいと評判なのだが、北見のたまねぎの知名度が高くないためメジャーな存在ではなかったという。

 生産量日本一でありながら北見玉ねぎの知名度が低いのは、店頭では「北海道産」と表示されてしまっているからと考え、工場の一部を消費者向けにシフトして、最終的に消費者に届く商品に「北見」の地名を明記するようにした。市販品製造のための資金として、みらい基金に応募。助成が認められ、工場設備の充実やプロモーション活動などを開始した。

 助成のおかげで工場の稼働もスピーディーに行えたという。プロモーションについては、「オニオンコロッケ」を「たまコロ」と再ブランディングし、「全国コロッケフェスティバル」への出場を果たした。しかも初出場ながら全国のグランプリを獲得し、北海道全域に報道されるなどPRは十分な成果を上げた。

《中尾真二/HANJO HANJO編集部》

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