「2017年版 中小企業白書」と、創業支援策の課題(前編) 画像 「2017年版 中小企業白書」と、創業支援策の課題(前編)

制度・ビジネスチャンス

 もういささか旧聞に属するが、本年版の『中小企業白書』が4月21日に発表され、まもなく市販版も店頭に並ぶ。『2017年版 中小企業白書』、『2017年版 小規模企業白書』あわせて1200ページ余の大部ともなると、いささか読み通す気力も失せるが、近年は新聞発表にあわせて分かりやすい要約資料が公開されるうえ、特に今回は大部ながら記述は狙いを絞られており、あまりに多岐にわたる言及記載で、理解するのに困るといったことはない。また、3年前から『中小企業白書』と『小規模企業白書』が別々の冊子として刊行されているが、今回のものは内容上かなり重なっており、その分「読み飛ばしやすい」こともなくはない。

『2017年版 中小企業白書』は以下のように構成されている。

 第1部  平成28 年度(2016 年度)の中小企業の動向
   第1 章 中小企業の現状
   第2 章 中小企業のライフサイクルと生産性
   第3 章 中小企業の雇用環境と人手不足の現状
 第2部   中小企業のライフサイクル
   第1 章 起業・創業
   第2 章 事業の承継
   第3 章 新事業展開の促進
   第4 章 人材不足の克服

 平成28 年度において講じた中小企業施策

 このような目次構成からも判明するように、この『白書』の内容は比較的シンプルなキーワード、問題意識と検討事項で構成されている。中小企業をめぐる現状認識には、例年同様の環境要因や経営実態、問題指摘があてられているが、その後の分析には、「中小企業のライフサイクル」視点がつよく打ち出され、これに沿うかたちで、「生産性」、「雇用」、さらには「起業・創業」、「廃業」、「事業承継」といったところに集中的な検討がなされている。そして、現存中小企業の存続発展に望まれる「新事業展開」、また「人材不足」克服と人材育成に絞られた経営課題への詳しい言及がある。

 分析に当たっては、マクロ的な統計データ、あるいは個別の企業事例多数への言及が特徴的である一方で、特に「中小企業のライフサイクル」視点を生かすべく、東京商工リサーチのデータベース、CRD(Credit Risk Database)などの大量の企業経営データの集計分析が活用され、そこからいろいろと興味ある結果が報告されている。一例を挙げれば、安倍政権の「日本再興戦略」で「欧米並みの10%台の開廃業率」をあげ、「新陳代謝」の観点を強調し、ために「生産性の低い既存中小企業を淘汰退場させ、高生産性の新企業の創業参入を促す」ことが必要であるというような通説が流布されているが、今回の『白書』の分析では、現実には相対的に生産性の高い(つまり利益率の高い)企業がかなり「退場」し、他方で新開業企業のうちには生産性の低いものも少なくないという。つまり、一種の「逆選択」が生じているのである。もちろん存続している企業を含めて、中小企業の生産性の停滞、とりわけイノベーションの成果としての全要素生産性の相対的な低下が大きな問題であることを強調する。そこに、革新投資の低迷、大企業からのスピルオーバー効果の停滞、サービス業での生産性停滞が指摘され、したがって、新事業の積極的展開とそのための人材活用の課題が重視されるのである。

《三井逸友》

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