イチゴ授粉に期待の助っ人! ミツバチ代わりの「ヒロズキンバエ」とは? 画像 イチゴ授粉に期待の助っ人! ミツバチ代わりの「ヒロズキンバエ」とは?

制度・ビジネスチャンス

 ミツバチの代わりとしてイチゴの授粉に使えるハエ「ビーフライ」の利用が広がってきた。傷の治療など医療用に幼虫が使われるヒロズキンバエの成虫だ。現状はミツバチよりもコストはかかるが、試験では蜂が飛びにくい低温、低日照でも活動するため奇形果が減る効果も出ている。ミツバチの供給が逼迫(ひっぱく)した際に補完的な働きを期待する声も出てきた。
低温・低日照で活動 厳寒期補完に
 ビーフライをイチゴの授粉に使う研究が本格化したのは、2011年ごろから。09年にミツバチが不足し、価格が高騰したことから試験が始まった。岡山大学の吉田裕一教授は「もともとマンゴーでは訪花すると知られていた。イチゴでは花の蜜を吸うために花に行くと分かった」と話す。

 ハエといっても、人間の医療用にも使われるものだ。ヒロズキンバエの幼虫(マゴット)は、やけどや糖尿病で壊死(えし)した部分などを治療する「マゴットセラピー」に活用されている。
60カ所で利用
 ジャパンマゴットカンパニー(岡山市)は、医療用に無菌状態で増やした幼虫を生産・販売。ビーフライはこの技術を応用し、閉鎖環境で衛生的に増やしたさなぎの状態で園芸農家に発送する。ハウス内に入れておけば羽化して訪花する。同社によると、全国約60カ所で利用実績があるという。

 奈良県農業研究開発センターの試験では、ビーフライならではの利点も見えてきた。ビーフライの活動温度は10~35度とミツバチに比べて広く、厳寒期にミツバチが飛びにくい時期でも使える。

 12年度から行った試験では、無加温のハウスにイチゴ10品種を混植。7日間隔で1アール当たり300個のビーフライのさなぎを置いたところ、ミツバチと比べて12~4月に収穫した果実の重量に品種による差はなかった。

 一部の品種ではビーフライの授粉で、奇形果の発生がミツバチよりも少なかった。センターの東井君枝指導研究員は「県内は3アールほどの単棟ハウスが多く、ミツバチの巣箱を一つ入れると花の数が足りず、開花前に潜り込むことで奇形果が出ることがある」とみる。
人刺さず安心
 試験導入した農家からは問題点は挙がっておらず、逆に蜂のように人を刺さないためイチゴ狩りなど観光農園で利用を期待する声もあるという。

 10日に1度の補充が必要なためミツバチよりコストはかかるが、3アール程度のハウスであれば蜂と同等のコストで利用できそうだ。東井指導研究員は「治療用マゴットを国内で供給できるようになるまで、海外から購入していたと聞いた。イチゴでの利用が増えることで需要が安定し、医療向けの生産と共存しながら発展していければ」と望む。

 現在は同社と同大学、同センターの他、島根県や農研機構・西日本農業研究センターが協力し、利用マニュアルの作成などに取り組んでいる。

 吉田教授は「厳寒期はビーフライを使い、ミツバチの消耗を避けることにより、ミツバチの過剰な消費を抑えられるのではないか」と、補完的な活用を視野に入れる。

<ことば>  ヒロズキンバエ

 キンバエの一種で日本国内にも生息する。野外に出ても生態系に問題は起こらないという。ハウス内では餌となる動物性タンパク質がないことなどから、羽化して10日程度で死んでしまうとみられる。

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《日本農業新聞》

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