「爆買いツアー」終焉で貸切バス需要が急減、バス業界の今後は?:2 画像 「爆買いツアー」終焉で貸切バス需要が急減、バス業界の今後は?:2

インバウンド・地域活性

 狭義の着地型ツアーの事例も増えつつある。地域をよく知る地元の会社が、地元密着のガイドらを活用して企画実施する日帰りツアーである。これは、FITというより、旅の目的が個人ごとに「分化」し「深化」する邦人観光客が中心だ。例えば熊本県の天草では、地元バス事業者の小型バスを上手に活用し、「天草ぐるっと周遊バス」が3コース設定されている。「キリシタン」をテーマにしたコースでは、大型バスでは入ることができない小さな集落の教会堂を、地元在住のボランティアガイドが詳しく案内してくれる。クルマ(自家用車、レンタカー)旅行では味わえない知識が得られるのだ。

 このように、ターゲットの絞り込み方には様々な大小感があるが、「発地の旅行会社が旅程を作成し集客し送りだる(貸切バス事業者はチャーターされて運行するだけ)」という従来のスタイルから、「着地側で用意された商品に向かって、旅行者が世界から(時には地元から)集まってくる」という形態に変化しつつあるということだ。

 もっとも、本格的に普及するには、これらの商品向けの流通網の完成を待たねばならない。主要観光地では、もともとJTBグループが「サンライズツアーズ」ブランドで着地型ツアーを運営しているし、小規模プレーヤーによる体験型ツアーなどを検索、予約できるウェブサイトも充実しつつあるが、以前のコラム(「社会的行為」から「個人的体験」へ。変化を迫られる観光)で書いたように、公共交通や着地型ツアー、宿泊などの個別の素材を一般旅行者自身がうまく旅程に組み上げる「プランニング」過程の支援がまだ不十分なのだ。だが、そのボトルネックさえ解消し、商品と流通の「両輪」が回り始めれば、着地型ツアーは加速度的に充実するだろう。

 その時、この国の旅行市場で大きな存在感を持つのは、いったい誰だろう? 結局は旅行会社が企画集客して、貸切バスをチャーターして運行しているのだろうか(つまり貸切バス事業者は言われた通り走るだけ。それも、既存・大手の旅行会社が主体だったりしたら、結局は何も変わっていない)? あるいは、地元の強みを活かした商品を造成し、新しい旅行流通を上手に活用して集客する地元の旅行会社が登場したり、バスやタクシーの事業者が自らその立ち位置に名乗りを挙げたりするのだろうか? それとも、グローバル展開するIT企業などが流通網とともに現地サプライヤーを組織化したりするのだろうか?

 旅行業界、貸切バス業界ともに、従来のままでは生き残れないことが予測されるだけに、変革を主導するプレーヤーの登場に期待している。


●成定竜一(なりさだりゅういち)
高速バスマーケティング研究所株式会社代表。高級都市ホテルチェーンを退社後、06年に楽天バスサービス株式会社に入社。楽天トラベル「高速バス予約」サービスの事業責任者を経て、同社取締役に就任する。11年に退職すると、高速バスマーケティング研究所を設立。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員(10年度)、「国内観光の振興・国際観光の拡大に向けた高速バス・LCC等の利用促進協議会」(15年度~)などを歴任する。


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《成定竜一》

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