被災地の一関市、「地産外商」やネット活用で活性化/東レ経営研究所の佐々木常夫 画像 被災地の一関市、「地産外商」やネット活用で活性化/東レ経営研究所の佐々木常夫

インバウンド・地域活性

 私は先日、岩手県一関市を講演で訪れたが、東日本大震災で被災した東北の一つの市の躍動的な活動を知り感銘を受けた。同市が2012年から東京都内で始めた農産物や特産物を全国に売り込む「地産外商」を足場に、幅広い連携が生まれ、活性化の原動力となっている。
SNS使い拡散
 最初は、東京都内のコンビニエンスストアに一関市の観光や物産などを紹介するパンフレットを置くことから始まった。次いで都内の飲食店で一関市産の農産物を使った料理を提供した。「うまいもん まるごといちのせきの日」を定期的に開催して宣伝し、ファンをつくっていった。そのファンはインターネット交流サイト(SNS)を駆使し一関市の情報を発信する。

 通算の開催回数が20回近くになった「うまいもん」には毎回新規の参加者が訪れ、SNSや口コミで情報を流す。各人が1人当たり200人分の発信力を持っている場合、20人×200人で4000人、さらにそれぞれの知り合い100人に情報を流すと40万人となる。この結果、一関市の観光ホームページ(HP)のアクセス件数は、11年度の4万7000件から16年度には45万4000件に急増した。

 「うまいもん」への参加を契機に、首都圏で一関市を熱烈に応援する組織ができた。首都圏の大手企業に勤める女性管理職のメンバーが「震災を受けた東北を何とか支援したい」と、「いちのせきをまるごと応援し隊」を自発的に組織。毎年複数回、20人ほどの希望者を募り、一関市を訪れて農産物や特産品の生産者と交流し、それを首都圏で宣伝した。同メンバーのリーダーは東レの私の後輩だ。
都市の女性照準
 「いちのせきを応援し隊」の活動が成功したポイントはいくつかある。一つは、都市で働く女性のニーズを生産者に伝え、商品づくりやPRを共にしたことだ。第二に、生産物や畜産物の紹介にとどまらず、文化や伝統芸能、名所にも対象を広げて市全体の魅力を発信したこと。第三に、市長や職員が「応援し隊」の提案や改善事項に耳を傾け、細かく対応したことだ。行政には珍しい現場力・双方向力がある。

 こうした応援を味方にしつつ、一関市は勝部修市長のリーダーシップで、地産のおいしい農産物などを武器に、世界遺産の平泉との連携による「食と農の景勝地」に名乗りを上げ(全国で5地区が認定)、奥州市や平泉町との連携による世界農業遺産を目指している。さらには日本の農業を世界に発信すべく観光農業公園構想の検討も始めた。要は自分だけでやるのではなく、広域連携により活動の幅を広げているのだ。一関市は今燃えている。

 創意工夫次第で、地域を活性化できる材料はいくらでもあるということだ。「どうせわが故郷は」とか「わが市(町・村)には何もないから」という後ろ向きの発想は捨て、前向きにチャレンジすれば道は開ける。

<プロフィル> ささき・つねお

 1944年秋田市生まれ。東大経済学部卒。東レ入社。自閉症の長男と、肝臓病とうつ病の妻の介護をしながら2003年に東レ経営研究所社長に就任。『働く君に贈る25の言葉』などを出版。11年にビジネス書最優秀著者賞を受賞した。

一関スタイル ネット活用 広域連携 元東レ経営研究所社長 佐々木常夫

《日本農業新聞》

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