サービス産業の「生産性向上」はいかにして達成できるのか?:3 画像 サービス産業の「生産性向上」はいかにして達成できるのか?:3

IT業務効率

★人手不足解消とムダの排除が、生産性向上の鍵

 2年前に安倍総理が述べた『サービス業の生産性革命』の具現化を目標に、観光庁が2016年度に実施した「宿泊業の生産性向上推進事業」。宿泊業経営者自身が生産性向上に取り組むためのワークショップを全国で開催し、またモデル旅館ホテルへコンサルティングを行うことで、生産性向上の成功事例を約100件創出した。

 連載第2回では、事業の柱である全国でのワークショップの内容について、その中心的役割を担った、公益財団法人日本生産性本部 主席経営コンサルタントの鈴木康雄氏と熊木登氏に話を聞いた。改善による成功体験を作ることを目標に、事業者自身が課題に向き合い、改善点の決定から改善アプローチを実施。ワークショップではそのフォローアップを行うという位置づけだ。今回はこのワークショップより生まれた改善事例と、意識変化を見ていく。

■宿泊業における人材確保は、今後も続いていく大きな課題

 今回まとめられた冊子『宿泊業の生産性向上事例集』は、7つのテーマが設定されており、うち5つが「人手不足」に対応するテーマになっている。宿泊業における人手不足の状況について、例えば中小企業等経営強化法の、旅館業に係わる事業分野別指針によれば、課題として第一に人材確保の点を挙げており、改善が急務であるとの認識は広く共有されていると言ってもいいだろう。

熊木 「現在の労働市場が第三次産業へとシフトし、またインバウンドの観光客が増えている現在、宿泊業、旅館業が伸びていくことで、雇用を増やし、経済成長を望むことができます。しかし現状では、労働時間が長く、賃金が低いことなどから、従業員の定着率が低く、宿泊業の経営者の多くは『負の連鎖』に苦しんでいます」

 今後は少子高齢化が進み、若年層の人口が減少するだけでなく、現場を支えてきたエキスパート達が高齢化し退職していくという現実にも直面している。これらのことから、いかにして安定的に人材を確保するかが課題となっている。


■1人3役化、シフト改善による人手不足解消

 宿泊業は繁閑の波が大きい事業だ。1人がひとつの業務しかできないと、業務間連携はもちろん、繁忙期のヘルプ、隙間時間の活用など様々な面でムダが大きい。人材不足の改善や業務の効率化には「1人3役化」を進めることで、労働生産性の向上が期待できる。

鈴木 「改善にあたっては具体的な方法論を伝えました。どのような仕事があって、誰がその仕事をできるのか。それがわからないと配置ができないはずなのですが、管理者の頭の中にある印象で評価されてしまう。これを改善するには、例えばキャリアプランを把握するための『スキルマップ』というツールを教えるところから始めなければなりませんでした」

 スタッフごとの取得スキルがスタッフ自身にも周囲にも明確になる詳細なスキルマップの導入により、上司と部下の間でスキルについての建設的な話し合いが行えるようになる。また今後の育成目標が設定しやすくなると同時に、能力向上のための支援体制を組むことが容易になり、自然と本人のモチベーションも上がるという効果も期待できる。

 ホテル・旅館は、当日あるいは前日になるまで客数などが変動するため、スタッフのシフトを決定するのが直前になりがちな業種だが、前述の「1人3役化」と合わせて、流動性に柔軟に適応できる対応策を整えることで、人員配置のムダを省くだけではなく、特定のスタッフにかかる負荷を軽減することにもつながるのだ。

《かのうよしこ/ライター》

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