徳島上勝町から、地域産業活性化の原点を考える10の教訓 画像 徳島上勝町から、地域産業活性化の原点を考える10の教訓

インバウンド・地域活性

 第三に重要なことは、「売れるつまもの」は決してその辺に転がっている、無尽蔵にある葉をむしり取っているのではない。むしろ逆であって、現在市場に出しているつまもの商品は大部分が各農家で手間暇かけて栽培し、収穫されたものである。当然ながら市場と需要先の求める品質、また数量の安定供給確保を欠いていては、信頼を得られない。「いろどりのつまものは使える」という評判を確立できたからこそ、全国から注文が殺到し、いまも市場取引される需要の大部分を占有しているのである。それはまた、いろどりという企業の努力だけでは実現できず、取引契約している多数の農家などの生産販売意欲と栽培努力営農努力に支えられている。

 第四にはこれに関連して、ただ木の葉を採って出荷するというのではなく、その色彩、品質や形状などを規格化し、顧客からの注文指定で需要に応えられる体制を築いている。その中には、木の葉や実、枝などを組み合わせたオリジナルデザインの季節もの商品も多数組み込まれている。当然ながら、加工商品は付加価値を稼げる。こうしたさまざまな提供品をカタログ化し、取引先に配り、多種少量でも電話一本、メイル一つで発注できるようにし、また商品規格を維持していることもきわめて重要である。

 第五に、ここがきわめて興味あるところだが、各栽培・出荷農家同士の「競争」を組み込んだことである。実際には、各農家などには安定的な量の受注の商品群もかなりある。しかし、日本の農業から競争力を失わさせたともされる、「共同受注・販売」部分に過度に依存することなく、日々受注競争を促し、翌日出荷の個々の注文の「取り合い」、即納を競う仕組みを組み込んだ。それとともに、月間年間の出荷販売額を公表し、大いに競争心を刺激しあっている。NHKのTV番組で「おばあちゃんたちが市場経済に目覚めた」と描かれたところである。もちろん受注に即応するためには、日頃からしっかり草木を育て、需要の年間サイクルなどに気を配り、先を読んだ取り組みが促されることになる。同時にまた、長年のご近所同士、地域を支え合ってきた関係だから、競い合いの一方での助け合い、励まし合いが全体の流れを守っている。文字通りの「競争と協調」の仕組みなのである。

 第六に、それゆえ各農家への情報提供、ネットワークの構築を重視してきた。以前には電話FAXとPOS応用のPCネットワークを活用した。それで日々の新発注や市場の動向、さらには各農家の生産販売額などが一目でわかる。のちにはインターネットとwifi、タブレット活用に移行し、「上勝情報ネットワーク」として畑に出ていてもリアルタイムで諸情報がわかる、対応できるようにしている。情報化はここでも重要な武器であり、お年寄りも負けじとこれに取り組んでいるのである。

 第七に、この情報システムの構築等には、以前から国のさまざまな補助金を巧みに利用し、町と住民の負担を極力抑えている。高度情報化対応と地域活性化が国の重要施策であれば、こうした支援制度を生かさない手はない。しかも、立派な情報機器や回線をいくら整備しても、有効有益に活用しなければなにもならない。地域振興の支援予算がかたちだけを残しがちなのに対し、ここでは必要とされる情報網の整備に宛て、それを当事者たちが使いこなす必要性と有用性を積極的に結びつけている。おばあちゃんもネットを使いこなすのである。

 第八に、つまもの販売の成功に安住することなく、徳島上勝町いろどりの「地域ブランド性」と地域特性を生かし、さまざまな農産物等を開発販売し、新商品が続々と生まれている。最近では洋食にも使える新たな味覚・アクセサリーとしての「マイクロ葉わさび」に力を入れている。

 それにともない、横石社長らはつねに販売の第一線に立ち、東京などの大消費地に赴き、展示即売や市場めぐりを行うことで、顧客や取引先との対話を重ね、新たな商品開発普及や販路開拓に努めている。言い方は悪いが、「徳島の山のなかにこもっていてはだめ」なのである。

《三井逸友》

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