徳島上勝町から、地域産業活性化の原点を考える10の教訓 画像 徳島上勝町から、地域産業活性化の原点を考える10の教訓

インバウンド・地域活性

 高齢化・過疎化と既存産業の衰退といった事態に直面している地域は全国至るところに及んでいる。このままでは地域の経済的基盤が崩壊し、生活基盤を含めた負のスパイラルが広がるばかりとなる恐れは諸方面から危惧されている。「地方消滅」や「消滅可能性都市」といったショッキングな見出しが、一時至るところに踊った。そうした言い方には、公共政策の役割と可能性をあまりに軽視している面、地域住民の方々のさまざまな取り組みを看過している面がないとは言えず、また一種のアナウンスメント効果で、「そうなっても仕方ない、あきらめるしかない」といった印象を与えている観もある。

 もちろん現実は厳しい。しかしなお、地域経済の再生を目指す、地道な取り組みは各地で、息長くすすめられている。それらの教訓を学び、普遍的な意義を考えるのは当然無駄なことではないだろう。そうしたなかで、この10年来大きな注目を集め、画期的なサクセスストーリー、モデルケースとして取り上げられてきたものの一つが、徳島県上勝町の株式会社いろどりの事業である。それゆえ、多々紹介されてきた事例存在であることは間違いないものの、この厳しい時代にあればこそ、その普遍的な意義と教訓をいまいちど振り返るのも決して無駄なことではないだろう。

 徳島いろどりと言えば、申すまでもなく、第一には「木の葉っぱをお金に換えた」大胆なビジネスアイディア、発想の転換である。徳島県の勝浦川上流の山奥、ほとんど平地もないこの地に、木の葉っぱは無尽蔵にある、これを売ってお金を稼げる、そう考えたというのは大変な着想であった。大規模な投資も、熟練人材の養成確保も、原料の輸送も要らない、「いま、そこにあるもの」を価値ある商品に変えられるという発想そのものがきわめて画期的であった。このアイディアを立案し、事業化した立役者は、もちろん現在いろどり社長の横石知二氏である。当時上勝町農協営農指導員であった横石氏は、出張先での日本料理店で、客が料理に添えられていたつまものの葉を愛でていた、そこから着想を得たというのは有名すぎる逸話である。これなら上勝町にはいくらでもある、また高齢者でも取り組める仕事にできると。

 つまり、無限の可能性を秘めた地域の資源なり新たな事業の種なりは、足下に転がっている。それを誰が見いだすかなのである。

 しかし、第二には「葉っぱをつまもので売る」事業化をいきなり軌道に乗せたということでは決してない。つまものの販売は横石氏らの着想の一つでしかなかったし、ほかにさまざまな果実、野菜などの栽培を試みてきている。葉の出荷は1986年ころから始めてみたものの、なかなか売上は伸びなかった。試行錯誤のかたわら、横石氏は自腹で各地の料理店などを食べ歩き、どのような葉などが重用されるのか、またそれらはどのように入手されているのか、克明に見て歩いた。いわば徹底した市場ニーズ調査である。同時に、つまものの生産と流通の仕組みをどのように構築できるのか、しっかりと検討を重ねた。ものがある、需要がある、それだけではビジネスにはならない。受注、出荷、物流を含めた仕組みを構築できてこそ、事は動き始めるのである。

 その仕組みは、町の出資を得て設立された第三セクター・株式会社いろどりが一方の支えである。ちなみに、いろどりの事業はつまものの販売だけではなく、観光やまちづくりなど多様な地域振興の取り組みの一環として元来位置づけられてきている。これと二人三脚を組んだのが農協の組織である。物流と取引決済にかかるところは、農協の組織の力を大いに利用しているのであり、これなくしてつまもの販売の事業は成り立たない。それによって、全国の青果市場への受注翌日納入・取引という仕組みが回るようになっている。

 このように、実際には相当の期間と労力、努力が投じられて、初めて事業は軌道に乗ったのである。

《三井逸友》

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