斜陽産業に光! 多治見タイルのコト戦略 画像 斜陽産業に光! 多治見タイルのコト戦略

インバウンド・地域活性

★女性に人気沸騰の産業ミュージアム


 2016年6月、岐阜県多治見市に産業ミュージアムが開館、話題を呼びました。当初の入館者数の目標は年間2万5千人でしたが、開館1年を待たず、2017年2月に10万人を突破。予想の5倍以上という人気で平日でも客足は絶えず、館内は小さな子供を連れた家族やカップルなど、老若男女であふれています。

 中でも目立つのが若い人や女性の姿です。館内は特別展示を除き、基本写真撮影OKとなっており、SNSでの情報拡散の効果も絶大。また海外の情報誌で紹介されたことで、台湾からのバスツアーなど訪日外国人客の来館も増えています。

 この注目すべきミュージアムの名は「多治見市モザイクタイルミュージアム」。まず目を惹くのはタイルの原料を掘り出す「粘土山」をイメージした独特の外観、設計・デザインを手掛けたのは建築家の藤森照信氏。中には地元の有志が20年近くにわたって集めてきたモザイクタイルの製品、サンプル台紙、道具類や建造物の壁面の断片など、1万を超える資料が収蔵されています。

 一般的にミュージアムというと美術品等の貴重な文化財を展示する場所というイメージがありますが、タイルは建築物に使われる陶磁器製の薄片の総称でいわば工業製品。地元では開館前、そんなものを造って誰が来るのかという意見もあったといいますが、蓋を開てみれば、想像以上の注目度で瞬く間に話題のスポットとなりました。

 ミュージアムは地場産業の振興拠点も兼ねており、エンドユーザーとなる来訪者へ直接タイルの魅力を発信、消費者ニーズを知り、ビジネスチャンスにつなげることを目的としています。施設建設に当たっては責任ある団体が運営に当たることが条件とされ、地元タイル業界を中心とした一般財団法人たじみ・笠原タイル館が設立され、指定管理者として運営に当たっています。

 岐阜県はタイル生産でシェア日本一、特にモザイクタイルでは全国シェア8割超を誇ります。但し、モザイク出荷金額はピーク時の約4分の1にまで減少*。ミュージアムが置かれた笠原町は2006年に多治見市と合併しましたが、かつてはタイルの町と呼ばれ、人口1万人ほどの小さな町ながら最盛期には100を超えるタイルの工場が存在。高度成長期には団地やニュータウン建設などで多くの需要を得ましたが、施釉タイルの国内消費は1972年には減少に転じ、その後、安い外国製の台頭やバブル経済の崩壊などにより需要は激減。
*出典:経済産業省「工業統計調査(品目編)」

 こうした中、笠原町では1995年頃、有志が集まりタイル文化を後世に残すため、笠原タイルの蒐集を開始しました。モザイクタイルは多くの場合、建物が老朽化等により取り壊されれば、共に廃棄される存在です。そのままにしておけば、いずれ消えてなくなってしまいます。昭和30~40年代から笠原町のタイルは全国に出荷されてきました。その中には昭和という時代の暮らし、風俗が映し出されています。活動では地元からモザイクタイルの流し台、浴槽、かまど、また全国から銭湯の絵タイルや貴重な資料などが集められました。

 ただ、こうした活動は当初、地元ではあまり理解されませんでした。タイルなんて集めてどうするんだ?名もない職人の仕事の価値はないと多くの人が思っていたのです。しかし、こうして集めた収蔵品が今、地域の宝となっています。モザイクタイルは昭和を知らない若い女性たちには新鮮でかわいいと映っており、人気を呼んでいるのです。

《水津陽子》

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