NHK大河「おんな城主 直虎」幻想的なおとぎ話のなかの生々しい経営ドラマ 画像 NHK大河「おんな城主 直虎」幻想的なおとぎ話のなかの生々しい経営ドラマ

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 昨年の『真田丸』(NHK)が成功し、中園ミホの『西郷どん』や宮藤官九郎の『いだてん~東京オリンピック噺~』といった人気脚本家の話題作が来年以降のラインナップに連ねている大河ドラマに再び注目が集まっている。

 そんな中、今年スタートしたのが『おんな城主 直虎』だ。脚本は連続テレビ小説『ごちそうさん』(NHK)の森下佳子。主人公の井伊直虎を演じるのは柴咲コウ。

 物語は、今川家の統治下にある井伊谷で暮らすおとわが、許嫁の亀之丞と家臣の鶴丸とともに森で遊んでいる場面からスタートする。森に囲まれた井伊谷で暮らす子供たちの姿はどこか幻想的。竜宮小僧という精霊的存在の名も登場するためか、児童文学を見ているようである。

 しかし、幸福な幼少時代は突如、幕を閉じる。

 亀乃丞の父・井伊直満(宇梶剛士)が謀反を画策していると疑われたことから今川に討たれ、亀之丞は逃走する。 それから数年後。おとわは出家して次郎法師と名乗り、鶴丸は元服して小野政次(高橋一生)と名乗っていた。鶴丸の父・政直(吹越満)は、政次を井伊家の当主にしようと画策していたが、そこに亀之丞が帰ってくる。亀之丞は元服し井伊直親(三浦春馬)と名を改め、井伊家の当主となる。

 森下佳子は、『白夜行』(TBS系)等の作品で、幼少期に起きた決定的な出来事が、主人公たちの一生を左右するという物語を繰り返し描いてきた。本作もまた、普通なら一話で終わらせる幼少期を4話も費やして描き、大きく驚かせた。その後、物語は直親と次郎法師の関係をめぐって少女漫画のような物語が展開される。中々、大河ドラマらしくならないため、当初は戸惑った。

『JIN-仁-』や『天皇の料理番』など、TBS系の日曜劇場で骨太な時代モノを多数手掛けてきた森下の構成力に関しては信頼していたが、歴史上の有名な事件や人物が次々と出てくる『真田丸』にくらべると、小国の井伊家の物語は決して有名とは言えなかったため、一体この物語がどこに向かうのか、よくわからなかった。しかし、桶狭間の戦いを経て、直親が命を落とし、次郎法師が井伊直虎と名を改め、井伊家の当主となる第12回「おんな城主 直虎」から物語は急展開。戦国時代の当主の視点から見た“経営の物語”となっていく。

 新しい当主となった直虎は、瀬戸村の百姓たちから、豪商・瀬戸方久(ムロツヨシ)から借りた借金を帳消しにする徳政令の公布を懇願される。はじめは困っている百姓のためと思い、願いを受け入れる直虎だったが、井伊家もまた莫大な借金があり、徳政令を発行すると井伊家がつぶれてしまうと知り、あ然とする。

 一方、瀬戸村に徳政令を出したと聞きつけたほかの村からも徳政令を要求されるが、直虎は断る。裏切られたと思った百姓たちは今川家に助けを請い、井伊家と百姓の間には深い溝が生まれてしまう。

 百姓に翻弄される直虎は、さながらストライキにあった中小企業の社長みたいなものだろう。百姓たちを安易な弱者としてではなく、保身のためなら権力になびくズルさもしっかりと描く一方で、彼らを切り捨てるのではなく、どうやったらうまくやっていけるのかを本作は模索する。

《成馬零一/ドラマ評論家》

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