2017年の旅行業界トレンド「ブリージャー」 画像 2017年の旅行業界トレンド「ブリージャー」

インバウンド・地域活性

 昨年11月、世界最大のオンライン宿泊予約サイト(OTA:オンライントラベルエージェント)、ブッキング・ドットコムは2017年の旅行業界8大トレンドを予想し発表しました。2016年3月同社は、日本を含む世界10ヶ国を対象に2015と2016年の両年に一度以上旅行し、かつ旅行の計画に関わった各国1000人を対象に、2017年にどんな宿泊体験をしたいかなどを調査。その結果は興味深いものでした。

 たとえば、2017年には45%が「目的地に冒険的な場所」を、47%が「自分の友人が誰も訪れたことのないような未開の地に行ってみたい」と回答。また56%が「一人旅の回数を増やしたい」としており、こうした傾向はアメリカや中国、タイなどで顕著でした。爆買いが終焉、コト消費へのシフトがいわれていますが、本調査では中国やタイで心身を癒す旅行を求める傾向も強く出ました。

 すでに訪日客の8割はFIT(外国人個人旅行)客となり、旅慣れた旅行者が増加しています。インバウンド誘致ではこうした市場の変化に対応していくことが重要ですが、日本国内でこうした変化を先取り、ニーズに応える地域や企業はまだまだ少数派。中でも取り込みが遅れているのがビジネス兼観光市場です。

 今回の調査で2016年の海外旅行者全体のうち出張目的は40%で、その46%が「2017年には出張旅行の機会がさらに増えるだろう」と回答。こうした出張旅行にレジャー旅行をつなげる「ブリージャー(ビジネス+レジャー )」ブームは今後も続き、2017年は出張旅行者が出張そのものに付加価値を見つけ出すなどの変化が見られそうだといいます。

 海外出張するビジネスパーソンの実に49%が「滞在期間を延長して出張先を満喫」、75%が「来年も同じように滞在を延長するだろう」としており、出張旅行はもはや時間のロスや仕事の妨げではなく、新たな可能性の模索やキャリア形成のためのインスピレーションとして重宝されています。加えて30%のユーザーは「出張旅行の多い仕事に就けるなら、今より給与が低くても構わない」と回答しています。

 ただ、日本人では「出張期間を延長し、異なる都市や国を旅行した」経験を持つ人は22%、「出張旅行の多い仕事に就けるなら今より給与が低くても構わない」10%で、いずれも調査国中最低となっています。

 さて、ここで一つ質問です。あなたはこうした世界との格差が生まれる理由は何だと考えますか。一般的には長時間労働などの働き方の問題を挙げる人が多いでしょうか。ただ需要は喚起する仕掛けがあって初めて発動するものです。

 日本国内では今年2月、国が月末の金曜日の午後三時に社員を退社させ、2.5泊の旅などを誘発することで消費喚起を促す「プレミアムフライデー」がスタートしました。現在(3/24)のところプレミアムフライデーのロゴマーク申請企業・団体数は1022。初回は一部で18時以降の来店客数や店舗売上が大幅に増加した例もあるようですが、各種調査を見ると宿泊を伴う旅行等での利用はまだまだレアケースのようです。

 プレミアムフライデーが成功するには需要喚起する魅力的な商品が不可欠だといわれていますが、それはブリージャーも同じです。今、日本の観光地や宿泊施設でビジネスパーソンに対し明確な戦略を持ち、需要喚起する仕掛けをしているところはどれだけあるでしょうか。全国を歩いていますがあってもせいぜい居酒屋の晩酌セット程度、大半はこうしたニーズがあることすら気づいていません。

 国は平成22年より「共通基準による観光入込客統計」を発表していますが、平成25年(大阪・福岡を除く)45都道府県の中で集計済みの44の都道府県のうち34で、ビジネス目的の観光客一人当たりの消費額単価が観光目的を上回りました。一般的にはビジネス客の方が観光客より消費額が多いのですが、それを知る観光地や宿泊施設もまた多くはありません。

 本コラムでは以前、青森県八戸市のビジネス客を取り込む朝観光の取り組みを紹介しました。コト観光へのシフトには着地型観光の造成やそれを推進するDMOの役割が重要ですが、ブリージャーは掘れば間違いなく金鉱はそこにあるという市場です。観光地や宿泊施設には積極的な需要喚起の取り組みを期待するものです。


●水津陽子(すいづようこ)
合同会社フォーティR&C代表・地域活性化・まちづくりコンサルタント。地域資源活かした地域ブランドづくりや観光振興など、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、執筆を行う。2014年地方創生法に関連し衆議院経済産業委員会に参考人出席。著書に『日本人だけが知らないニッポンの観光地』(日経BP社)などがある。


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