■ニュース深堀り!■変わる制度と環境、シニア人材雇用の企業事情 画像 ■ニュース深堀り!■変わる制度と環境、シニア人材雇用の企業事情

人材

 安倍政権が掲げる“一億総活躍社会の実現”に向けて、高齢者の再雇用や就労促進への取り組みが進められている。政府は企業におけるシニア人材の活用を推進すべく、「65歳超雇用推進助成金」や「高齢者雇用安定法の改正」といった施策を実施。これを受けて労働人口の減少による人手不足に悩む企業側も、定年制の延長や定年後の再雇用の仕組みを整えている。

 ただ、シニア人材を再雇用、もしくは定年延長した場合には、雇用形態、役職、給与や評価体制をどうするかという課題もある。先ほど取り上げた法改正にどう対応すべきかも、経営者にとって気になるところだろう。これらの問題について、シニア人材の人事や経営問題に詳しい、人事戦略研究所所長の山口俊一さんに話を伺った。

■進む再雇用の一方で、65歳定年義務化に備える企業

――政府は企業がシニア人材を活用しやすくするため、助成金や定年制に関する施策を打ち出しています。これらは、シニア人材の雇用事情にどのような変化をもたらしているのでしょうか。

山口 法改正の面では、「65歳超雇用推進助成金」より「高齢者雇用安定法の改正」のほうが影響は大きいと考えます。企業側は定年制の延長や希望者の再雇用の仕組みの整備にすでに着手しています。とくに人手不足に悩む中小企業では、もともと定年制を柔軟に運用しており、助成金などはその追い風になっています。

 高齢者雇用安定法の改正では、2025年までに段階的に65歳までの雇用を義務化することが決定しています。これは、年金の支給年齢を引き上げるため、収入の空白期間をなくすという目的があり、現在は62歳までとなっています。多くの企業はシニア人材の活用について、定年の延長よりも再雇用で対応しているようです。ただ、最終的には65歳まで雇用を継続させなければいけないので、その準備や対応を各企業が行っているところです。

――定年後の再雇用では賃金の引き下げが問題になり、いわゆる“長澤運輸裁判”が話題となりました。シニア人材の雇用条件にも、影響を与えることになりそうです。

山口 トヨタ自動車が一定の条件を満たせば、現役時代と同水準の待遇で働き続けられるコースを設定しましたが、このような措置を多くの企業で採用するのは難しいでしょう。再雇用や定年延長に関連して、長澤運輸裁判と同様の訴訟は増加する可能性が考えられます。

 また、同一労働同一賃金を法制化する動きもあります。これまでの年功序列賃金を改め、中高年以降の賃金を抑制し、60歳以上の雇用にあたり大幅な賃下げにならないような取り組みも増えると考えます。

■中小企業におけるシニア人材活用のポイント

――中小企業がシニア人材を雇用、もしくは再雇用する場合、どのような点に注意すればいいでしょうか。

山口 再雇用者に対して人事評価などを行わない企業もありますが、「期待役割の明示」「人事評価の実施」「給与・賞与の改定」などをはっきりさせ、モチベーション維持に努めたほうがよいと考えます。これらが明確でないと、義務化対応が目的となり、積極的な人材活用につながらないでしょう。労使双方にとって良いことはなく、シニア人材を再雇用する意味が半減します。

《中尾真二/HANJO HANJO編集部》

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