「爆買いツアー」終焉で貸切バス需要が急減。バス業界の今後は? 画像 「爆買いツアー」終焉で貸切バス需要が急減。バス業界の今後は?

インバウンド・地域活性

 それどころか、特定のデスティネーション以外の地域の事業者にとってはFIT増加など全くの他人事である。高速バス事業者のほとんどは、地域独占的な事業免許の下での地域の路線バス事業が本業で、おおむね社風は保守的。一見、観光と親和性の大きそうな高速バス事業も、実は利用の多くが「地方部在住者の都会への足」としてであり、そもそも邦人観光客の取り込みさえほとんど手がついていないのである。

 まずは、全国の高速バス事業者らが、「インバウンド=貸切バスの分野。自分たちは関係ない」という意識を改め、FIT化が進むインバウンド市場を自分たちの領域だと理解することが必要だ。

 本年1月、国土交通省が、「高速バス情報プラットフォーム」を開設した。外国語対応している、高速バスの予約サイト、および高速バス事業者の公式サイト(ホームページ)を紹介するというものだ。筆者も、同省および観光庁の検討会構成員として制作に深く関わった。同省では、本プラットフォームの積極的露出を図っていくとしているものの、サイト自体はいわば「リンク集」に過ぎない。だが、国が自ら、全国の高速バス事業者に対しサイトの多言語化を促しているということの意味を、各事業者はよく認識すべきだ。現状では、本プラットフォームで紹介(もちろん掲載料などは不要)されているバス事業者の公式サイトは、あまりに数が少なく悲しい気分になる。

 合わせて、3.体験化(いわゆる「コト消費」)への対応として、高速バスとは別に「着地型」旅行商品の充実が求められる。従来型の、発地(海外、または東京などの大都市)側の旅行会社が企画したツアーでは、どうしても総花的で中庸な商品になってしまうが、ウェブ予約の普及により、着地(デスティネーション)側で企画された個性的な商品を旅行者自らが情報収集して予約することが可能になった。しかしながら、これまで発地型ツアーに大きく依存してきたわが国では、広い意味での着地型商品は大きく不足している。この点については、次回の本コラムで考えてみたい。

 いったんまとめると、この国では「インバウンド=バスツアー」というイメージが強いだけに、行政当局など周辺の関係者の間では「バス業界はインバウンドの扱いに慣れており、意識も高いはずだ」という誤解がある。それどころか、バス業界内でさえ「インバウンドは一部の貸切バス事業者のもの」という認識が定着しすぎており、FIT化の進展によって矢面に立っているはずの高速バス事業者の当事者意識は不十分だ。筆者としては、団体ツアーから個人自由旅行、すなわち貸切バスから高速バスへの変化の意味を、引き続き業界内外に説き続けたい。


●成定竜一(なりさだりゅういち)
高速バスマーケティング研究所株式会社代表。高級都市ホテルチェーンを退社後、06年に楽天バスサービス株式会社に入社。楽天トラベル「高速バス予約」サービスの事業責任者を経て、同社取締役に就任する。11年に退職すると、高速バスマーケティング研究所を設立。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員(10年度)、「国内観光の振興・国際観光の拡大に向けた高速バス・LCC等の利用促進協議会」(15年度~)などを歴任する。


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