~日本経営品質賞:1~理論と現場からCSに迫った先に見たES 画像 ~日本経営品質賞:1~理論と現場からCSに迫った先に見たES

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 データベースの完成と稼働によって、トラブルフリーを目指す理念は徐々に社内へと浸透していく。その成果は半年ほどが経つと、目に見えて表れるようになった。まずはオイル交換時期をダイレクトメールで知らせることから始めると、徐々に顧客がショップを訪ねる機会が増えていったという。

 それとともに、社内からはClearBoxに対して改善要求の声が挙げられた。河村氏がファイルメーカーに精通していたこともあり、ボタン配置やウィザードの手順などについての意見を聞いては、自らの手で改善を行っていく。それは、仕事の環境は自ら変えていけるという認識を、社員に植え付けることになった。この意識改革はやがてカワムラモータースの経営改革において、重要なミッションとなっていく。

■社員が顧客と一緒に目指す“心温まるカーライフ”

 “トラブルフリーのクルマを創ろう”というミッションと、ClearBoxの運用によって、カワムラモータースの経営革新は正しく進んでいるように思われた。

 当時、河村氏には右腕として頼りにしている社員がいた。社長としての権限を積極的に委譲し、経営方針についても深く話し合う間柄だったという。その社員が突然辞職したいと言い出した。結局、引き留めることはかなわずに、彼は会社を去ってしまう。

 一体何が悪かったのだろうか? そのときに、河村氏はあることに気がつく。自分が進めていた経営改革には、社員一人一人に対する視点が欠けていたのではなかったのかと。

 機能とチームワークでトラブルフリーのクルマは作れる。しかし、顧客から拾った声を見直すと、ClearBoxの仕組み自体を評価するものはほとんどなかった。お叱りを受けたのは挨拶や配慮が足りなかったことについて、逆にお褒めの言葉を頂いたのは社員の心配りに対してのものばかり。そこで、河村氏は初めて、顧客がトラブルフリーの先にある、“心温まるカーライフ”を一緒に築いていくことを望んでいるのだと理解した。

「それまでの経営改革は私がみんなを引っ張る、いわばトップダウン方式でした。それに付いて来れない人には『頑張って』と声をかけるだけ。ついて来れる人が頑張れば、やがて皆も追い付いてくるだろうと思っていたんです。でも、その時からは社員の1人1人に向き合おうと心に決めました」

 これをきっかけに、カワムラモータースは新たな経営方針として“心温まるカーライフを創ろう”を打ち出していく。それは、CSの前提となるESを改めて追及しようとする、河村氏の決意の表れでもあった。

■社員と向き合い、一丸になって顧客満足度向上に臨む

 トップダウン方式の優れたところは経営革新のスピード感にあるが、一方で何かあれば上司に聞くという依存関係を生み出す。この状況を打破して、社員の一人一人が経営のことを考えるような風土を作ることが、河村氏の目下の目標となった。

 状況を改善するための一手として、河村氏はまず店長という制度を廃止する。以降のカワムラモータースでは、営業、整備、ショールーム管理の3部門にリーダーを指名。すべてをその合議によって決定する体制を整えた。

「そうなると、今度は私に意見を求めようとするのですが、そこはやんわりと退けました。『皆で話し合って決めたことに文句は言わない』と伝えることで、そのコンセプトを理解してくれた人から、徐々に話し合いが生まれていったんです」

 今ではショールームの運営などについて、社員が積極的に話し合おうとする空気が生まれているという。その集大成となったのが、同社独自のサービスとなる「メンテパスポート」の開発だ。これは、ホンダが提供するメンテナンスパック商品を独自に再構築したもので、その過程においては社員からさまざまな意見が寄せられたという。

「以前であればプロジェクトの企画と開発はすべて私の仕事でした。でも、それは一番やりがいのあることを独占していたことでもあったんです。社員の生き方、自己変革を支えるためには、そのプロセスに彼らを巻き込むことが重要でした」

 トラブルフリーという独自能力をベースとし、社員が経営品質の向上を考える環境を作り、“心温まるカーライフ”という顧客価値を生み出していく。カワムラモータースにおける経営品質向上の取り組みは、顧客、社員、会社のそれぞれに対して成果を生み出した。その歩みは今も止まることなく続いている。

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《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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