福島第1原発の6年。「野戦病院抜け出した」 画像 福島第1原発の6年。「野戦病院抜け出した」

インバウンド・地域活性

 ◇軽装・簡易マスクで作業可能に/協力企業と連携環境も改善
 東北の太平洋沿岸を中心に甚大な被害が発生した2011年3月11日の東日本大震災。東京電力の福島第1原子力発電所(福島県大熊町・双葉町)は津波に襲われて全電源を失い、稼働していた1~3号機が炉心溶融(メルトダウン)を起こした。以来6年、現地では事故の収束、廃炉に向けた対策など懸命の作業が関連メーカーや建設会社も加わって続けられてきた。事故発生からこれまでを振り返るとともに、今後の廃炉作業を展望する。(編集部・遠藤奨吾、田村彰浩、堀井厚志)
 「やっと野戦病院から抜け出し、通常の現場に戻りつつある」-。東電福島第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは現況をそう表現する。
 福島第1原発では原子炉建屋の爆発で放射性物質が大気中に放出され、敷地内には大量のがれきが散乱。原子炉に水を注いで冷却し、事故を収束させる作業は過酷を極めた。敷地内は放射線量が高く、タイベックスーツ(防護服)や全面マスクといった重装備を強いられるだけに、特に夏場の厳しい暑さは作業員たちを激しく消耗させた。
 震災直後に進められたのは、がれきの撤去や放射性物質の飛散防止対策、汚染水を処理する施設の建設、処理水を貯蔵するタンクの建設など。続いて地下水をコントロールするため、陸側遮水壁(凍土壁)や海側遮水壁(鋼管矢板)を構築。地表をモルタルで覆って放射性物質の飛散と雨による地下への浸透を防ぐフェーシングなどが行われた。
 敷地全体にフェーシングが施されたことで、屋外の作業環境は大きく改善。昨年からは1~4号機の建屋周囲などを除く9割のエリアでは、基本的に一般の作業着と簡易なマスクで作業ができるようになった。
 軽装備で作業ができるようになったことのメリットは大きい。作業員同士が普通に会話でき、現場でのコミュニケーションが円滑化した。「現場に長時間いられなかった頃は、遠く離れた場所での紙面による打ち合わせが日常だった。今は現場のそばで実際に目で見ながらKY活動などを行い、作業に入れる」(東電関係者)。作業前の打ち合わせを綿密に行えるようになり、作業中の事故が大きく減少。装備の軽減で夏場に熱中症にかかる作業員も大幅に減ったという。
 一昨年には、約1200人が利用できる大型休憩所が構内に完成した。協力企業など関係者の打ち合わせスペースのほか、リラックスルームやシャワー室、温かい食事が取れる食堂を備えている。昨年3月にはコンビニエンスストアも開店するなど、通常の職場以上に環境改善に積極的に取り組んでいる。
 作業員からは、「現場で食事の心配がなくなった」「メニューの選択など食事の楽しみができた」「肉体・精神的な負荷が和らいだ」といった声も聞かれる。
 事故発生直後から復旧事業に携わってきた準大手ゼネコンの幹部は「最初の作業環境は本当にきつく、人員確保も大変だった。今では装備は軽くなり、休憩時にくつろげる場も整った。数年前に比べて作業環境は一変した」と話す。
 原発事故の現場という特殊な環境下で、安心して作業ができる環境を整えていくことは、これから40年にもわたる廃炉作業を円滑に進めるための大きな課題の一つといえる。
 これまで東電の職員が使用していた新事務棟の改修工事が完了し、「協力企業棟」として新たに供用を始めた。先月20日から、各地に点在していた協力企業各社の事務所が同棟内に順次移転している。東電側の拠点となる新事務本館に隣接しており、協力・連携体制が一段と強化される。
 増田プレジデントは同23日の定例記者会見で、「ようやく協力企業の方々と東電が密着し、同じ場所で執務できる環境が整った。関係者全員が一体となり、今後も安全・着実に廃炉作業を進めていく」と意気込みを語った。
 作業環境の改善を進める上で大きな転機となった6年目。廃炉に向けた原子炉建屋内の作業はこれから本番を迎える。

廃炉への道程-福島第1原発の6年・1/「野戦病院抜け出した」

《日刊建設工業新聞》

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