「完全個室」超豪華高速バス競争が勃発、各社の戦略は? 画像 「完全個室」超豪華高速バス競争が勃発、各社の戦略は?

インバウンド・地域活性

 今年に入ってからの新車3種について興味深いのは、その10年の動きをリードし続けた「高速ツアーバス(当時)の雄」であるWILLERと、迎え撃つ側の代表格といえる両備、JRらがほぼ同時に超豪華車両を投入する点だ。絵に描いたような「地元(岡山県)の名士」である両備ホールディングスが、わざわざ大都市間市場に打って出るのも驚きだ。

 もっとも、3者の戦略は2つに大別できる。関東バス/両備HDは、1往復(計2台)の車両を徹底的に豪華に作った。従来の「国内で最も豪華な高速バス」である海部観光(徳島県)の「マイ・フローラ」が「ほぼ個室、12席のみ」であるのと比べると、「完全個室、11席」というスペックからは、日本一にこだわる経営者の強い意志が伝わるだろう。

 一方、WILLERとJRは、東京~大阪にそれぞれ毎日数十往復運行される両者の高速バス群のうち、WILLERは1往復、JRは一部車両の、さらに車内の一部座席のみ(台数、席数は本稿執筆時点では未発表)。つまり、これらの超豪華車両はブランドを象徴する「アイコン」としてメディア露出などを牽引するが、実際の「金儲け」は、より座席定員が多く収益性が高いうえに幅広い層に利用される、通常の横3列、4列シート車両で行うつもりなのである。

 彼ら、特にWILLERは、ブランドメッセージを体現する印象的な車両カラーリングや、ポイント還元など充実した会員プログラムによりリピータの囲い込みに実績がある。それらの目新しい手法で一歩譲るJRも、今回はAKB48の横山由依さんを起用した広告を大々的に展開し、半世紀続く伝統ある路線愛称「ドリーム号」の「ブランド化」に注力する。

 合わせて両者は、メイン商品に当たる横3列の「普通に豪華」、4列の「ちょっと快適」座席のブラッシュアップにも熱心だ。「従来の日本一豪華」マイ・フローラの海部観光も、徳島~東京、徳島~大阪で同じ手法を展開している。ところが関東バス/両備HDは、同じ区間に収益性のもっと大きい商品を走らせているわけでもなく、「ドリーム・スリーパー2」という車両の愛称はあるものの、高速バス事業全体を指す「ブランド」も持っていない。

 わずか10年前、潜在需要が極めて大きい「ブルー・オーシャン」に見えた首都圏~京阪神は、急拡大しつつも新規参入が続いたことで、今や数十社がしのぎを削る「血の海」になってしまった。その中では、ブランド戦略に長け、あるいは伝統の力でリピータを囲い込み「穏やかな内海」作りに成功しつつある強者と、目先の価格競争にしか活路を見つけられない弱者に、プレーヤーの二極化が進む。関東バス/両備HDは、この強者とも弱者とも異なる手法で「レッド・オーシャン」に戦いを挑むが、その成否は現時点では未知数だ。

 異質の挑戦者の登場が、高速バス業界をどのように変えていくか、楽しみである。


●成定竜一(なりさだりゅういち)
高速バスマーケティング研究所株式会社代表。高級都市ホテルチェーンを退社後、06年に楽天バスサービス株式会社に入社。楽天トラベル「高速バス予約」サービスの事業責任者を経て、同社取締役に就任する。11年に退職すると、高速バスマーケティング研究所を設立。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員(10年度)、「国内観光の振興・国際観光の拡大に向けた高速バス・LCC等の利用促進協議会」(15年度~)などを歴任する。


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