「完全個室」超豪華高速バス競争が勃発、各社の戦略は? 画像 「完全個室」超豪華高速バス競争が勃発、各社の戦略は?

インバウンド・地域活性

 今年に入り、高速バスに「超豪華車両」の登場が続いている。先陣を切ったのは関東バス/両備ホールディングス共同運行の「ドリーム・スリーパーII」。座席定員11人(通常は45~49人)は国内最小(つまり一人当たり専有面積は国内最大)であるうえ、扉で完全に仕切られる「個室」(安全確保上、施錠は不可)は国内初。1月18日(水)から運行開始。

 続いてWILLER EXPRESSが「休息」にこだわった「ReBorn」を発表。シェル型に包まれた座席は斬新かつ快適。2月17日(金)運行開始予定。JRバス関東/西日本JRバス共同運行「ドリーム号」にも、3月から超豪華座席搭載の新型車両が導入される予定だ。

 これらの超豪華車両は、いずれも主に東京~大阪間に投入される。東京~大阪というといかにも大動脈だが、実は高速バスにとって開拓が遅れていた市場だ。第一回目のコラム(16年10月28日「大都市で知られていない『高速バス』の成長」)でご紹介したように、高速バスはこれまで、地方部における「地元の名士企業」としてのバス事業者の存在感の大きさによって「地方から都市への足」として成長してきた。逆に大都市では認知が遅れ、両端が大都市に当たる首都圏~京阪神/名古屋/仙台の3区間は、特に、その市場規模の大きさと反比例して高速バスの存在感が小さかった。大きな潜在需要が残っているともいえた。

 筆者は2006年から、立ち上がったばかりの「楽天トラベル高速バス予約サービス」を担当したが、上記の理由からあらゆるリソースを大都市間3区間に集中させ需要喚起を行った。これまでバス事業者は、地域独占的な免許制度ゆえ「待ちの姿勢」を取りがちであったが、業界横断的に予約を取り扱う同サイトが積極的にプロモーションを行ったのである。

 ちょうど、規制緩和により高速ツアーバス(バス事業者主導ではなく旅行会社主導による高速バス事業。詳細は別途このコラムでも紹介したい)が容認され高速バス分野でも新規参入と競争が始まるとともに、旅行業界の柔軟なアイデアが流入した直後だった。大都市市場はウェブマーケティングと親和性が大きく、高速バス市場(全体)は、楽天の参入後わずか4年間で、首都圏~京阪神が2倍以上に、首都圏~仙台は約5倍に拡大しその後も成長中だ。

 その過程で起こったのが商品多様化である。後発であっても集客が容易なウェブマーケティングの登場は、事業免許制度改正の効果以上に新規参入のハードルを下げ、これらの区間では激しい競争が始まった。従来の電話予約と異なり、画像やクチコミを確認しながら予約できるウェブサイト作りは乗客に比較検討を促し、「超豪華/格安」「女性専用」「早朝4時台に目的地到着」など市場のセグメント化が始まった。

 今回の豪華車両らは、個別に見れば関係者の様々なアイデアや苦心が見受けられ頭が下がるが、流れとしてはここ10年の動きの正常進化である。

 その10年の動きを主導したのは、旅行会社を出自とする高速ツアーバス各社であった。後発ゆえ当初は格安を武器にした彼らは、ウェブマーケをフル活用し、数年で百花繚乱の商品群を作り上げた。その彼らを、これまで地域独占免許の下で事業を行ってきた「既存」事業者らは、「うわべだけで、安全性を軽視した低質な事業者」(現に、高速ツアーバスの中には、関越道事故のような悪い例も含まれていたことは事実だ)と蔑むと同時に、規制に守られてきた自分達には真似できない柔軟さを強く畏怖した。その結果が、国交省「バス事業のあり方検討会」の結論としての「新高速乗合バス制度」である。検討会で既存側は徹底して高速ツアーバス制度廃止(締め出し)を訴え、ツアー側は既得権益の壁の存在を主張した結果、2013年に両者は「両者の長所を取り入れた」制度に一本化されたのである。

《成定竜一》

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