朝ドラ「べっぴんさん」に見る、うまくいく “両輪経営” 画像 朝ドラ「べっぴんさん」に見る、うまくいく “両輪経営”

制度・ビジネスチャンス

 連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『べっぴんさん』(NHK)は、仕事と子育てに奮闘するお母さんたちの姿が描かれたドラマだ。

 物語の舞台は戦中から戦後にかけての神戸。主人公の坂東すみれ(芳根京子)は焼け野原となった神戸で、女学校の手芸倶楽部でいっしょだった小澤良子(百田夏菜子)と村田君枝(土村芳)、看護師の小野明美(谷村美月)と共に、総合子供用品店「キアリス」を立ち上げる。

 神戸にある子供服専門店の創業者のひとり、坂野惇子の半生をモチーフに作られた本作は、「キアリス」という会社の成長物語でもある。靴店の一角を借りて始めたお店が、少しずつ大きくなっていき、それにともなって組織として変化していく様は、経営モノとしても見どころ満載である。

 脚本を担当する渡辺千穂は、会社内の壮絶なパワハラを描いた『泣かないと決めた日』(フジテレビ系)や幼稚園のママ友同士のイジメを描いた『名前をなくした女神』(フジテレビ系)などを手がけてきた。

 代表作は、人間同士の格付けバトルを“マウンティング”という言葉で定着させたファッション雑誌編集部を舞台にした沢尻エリカ主演の『ファースト・クラス』(フジテレビ系)だろう。

 これらの作品は人間の暗部をこれでもかと描く作品だったため、NHKの朝ドラという、ある種、真逆の世界でドラマを書くと知った時は、どういう話になるのかまったく予測がつかなかった。

 『べっぴんさん』は、戦前・戦中・戦後を舞台にした女性企業家の一代記という、近年の朝ドラの必勝パターンに忠実に作られているように見える。

 しかし、第一週で幼少期を描いた後、普通の朝ドラならばじっくりと描くはずの、学生時代・結婚・出産といったイベントを一気に見せてしまい、朝ドラの肝とも言うべき戦時中の場面を第二週で終わらせてしまう。まず、このスピード展開に驚いた。

 その後、すみれは、子どもを育てるためにお店を開くことになるのだが、明美以外の三人はお嬢様育ちで世間知らずのため、はじめはお客さんが怖くて接客ができず、商品の値段も決めることにすら、オロオロしている。

 そんな素人くさいやりとりを見ていると危なっかしくて心配になるが、同時に毎日が文化祭のように楽しそうで、まるで、戦争で奪われた青春を、彼女たちが、ここで取り戻しているかのように見えてくる。

 そんなキアリスには多くのお母さんたちが集うようになってくる。戦後、誰もが貧しかった時代に、商品を買えないお母さんのためにベビー服の型紙を安く提供したり、子育ての相談に乗ったりするうちにどんどんコミュニティ化していく。この辺りの発展の仕方は小さなお店をやっている人にとっては、とても参考になるのではないかと思う。

 思えば『ファースト・クラス』も、えげつないマウンティングの根底にあったのは、仲間たちと雑誌を作っていく働くことの喜びだった。

 良子を演じているのがグループアイドル・ももいろクローバーZのリーダー・百田夏菜子ということもあってか、新人アイドルの成長していく姿を見守るような楽しさもある。

《成馬零一/ドラマ評論家》

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