【中小工場のIoT化最前線:2】LCCを実現、武州工業の戦略とは? 画像 【中小工場のIoT化最前線:2】LCCを実現、武州工業の戦略とは?

IT業務効率

【記事のポイント】
▼一個流し生産とIoTの相乗効果で、日本の製造業でも海外の低コスト製品と競争できる
▼重要なのはIoT導入の目的意識と、それにマッチしたIT化する箇所の見極め


■LCCと戦う日本企業、そのIoTへの取り組みとは?

 IoTは関連技術の発達とともに、どのビジネス分野においても避けては通れない重要な課題になってきた。経産省は主導する『ロボット革命イニシアティブ協議会』において「中堅・中小製造業向けIoTツール」を広く公募するなど、中小企業が不慣れなIoTを導入しやすくなる流れを作ろうとしている。日本の産業を支えてきたモノ造りの最前線である、製造業・加工業の中小企業においても、IoTの潮流はすぐそこまでやって来ているのだ。

 IoTの導入によって成果を上げ、作業効率改善や業績アップに繋げている企業、分野がすでに多いことは、当サイトでも記事にしてきている通りである。しかし、そうした先駆者の成功例を見て、それが流行なのだとばかりに、やみくもにIoTを導入しようとしても、うまくいくとは限らない。

 IoTはツールであり、ツールは目的、ニーズのために用いられるものだからだ。まず考えるべきなのは、IoTという手段を導入する“目的”、“理由”、“必要性”の方だろう。生産性を上げたい。無駄をなくして効率化したい。そういう目指すべきものがはっきりしている事業者にこそ、IoTというツールは大きな力になるのだ。

 そのことを、改めて強く感じさせてくれる企業があった。東京都青梅市という地元に根ざし、自動車部品向けパイプ加工の分野で存在感を放つ、武州工業株式会社である。

 自動車部品といえばいわゆるLCC(Low Cost Country:ローコストカントリー)との熾烈な価格競争にさらされている、過酷な業界というイメージがある。そんな中にあって、武州工業は着実に売り上げ実績を積み重ねてきている。それどころか、近年では本業のパイプ部品のみならず、培った技術を活かした知育玩具や医療機器へも分野を広げ、大きく業績を伸ばしてきた。

 これらの武州工業の成功には、IoTの導入が貢献しているという。取材を通じて、同社の好調の背景に、二つのキーポイントが感じられた。一つはIT技術の効果的な導入。もう一つが企業として持つ目標・目的の確かさだ。武州工業では、この二つの要素は密接に繋がっていて、業績のみならず労働環境についても、よい影響を与えているようだ。

■IoTの導入が“一個流し”の生産効率を最大化する

 直近で武州工業が導入したIoT機器は、ピストンのように動くパイプ加工機械における、動作回数などのデータを記録するものだ。センサー部が機械の動作状況を記録し、セットトップボックス状の処理装置を介して、ネット上にあるクラウドサーバに情報が送られる。そのデータは社内の誰もがインターネットから閲覧できる。これにより工程が順調なのか、どこかでボトルネックが発生しているのかが、すぐ分かるというわけだ。

 こうした“見えにくかったものをデータとして可視化する”ことはIoTの得意とするところだ。生産性アップを目指し、無駄の削減を図る目的でIoTを導入するのは、多くの現場で有益だろう。

 動作回数で稼働率を詳細に知れれば生産計画に役立てられるし、向上にどんなテコ入れが必要かを考える目安にもなる。機材のメンテナンスやリプレイスのタイミングを判断する材料にもなるだろう。温度湿度といった環境面のセンサーならば、繊細な製品の品質管理などにも力を発揮しそうだ。

 システム構成はセンサー部に中古のiPod Touchを利用し、処理装置の中核を為すのはラズベリーパイ(Raspberry Pi)という、ユーザーがプログラミングで機能を追加できる超小型シングルボードコンピュータだ。どちらも数千円という安さの機材である。PCに詳しい人ならば拍子抜けするほどシンプルな構成で、その分、全体のコストも低く抑えられるという。ケーブルや無線、電源その他を含めて、この一式で五万円前後とのことだ。

 だが、こうしたシステムを、どの企業でもすんなりと導入できるかというと、そこは一筋縄ではないだろう。実際にはデータを扱うクラウドサーバや、そこで動くソフトウェア、閲覧端末などを用意しなければならない。現場の従業員はその使い方もマスターする必要がある。全体で見れば、それなりの金銭的人的コストがかかることになってしまう。

 武州工業の場合は、それを低コストのまま可能にする強みがすでにあった。会社として長く取り組んできた、業務のIT化というバックボーンがあったのである。

《久保田弥代/HANJO HANJO編集部》

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