今年こそ都会の仕事を農村で! ICT活用、移住者、移住企業続々 画像 今年こそ都会の仕事を農村で! ICT活用、移住者、移住企業続々

IT業務効率

 情報通信技術(ICT)の活用で、時間や場所にとらわれない働き方が広がってきた。政府の「働き方改革」の一環で企業の研究部門やデザイン、ICT産業など勤務地に縛られない業種で、拠点を農村に移す企業が相次いでいる。受け入れ自治体は移住や雇用増を期待する一方、「興味はあるが不安がある」と感じる企業は多く、課題もある。
共同事務所が拠点 長野県富士見町
 長野県東部、標高1000メートルの中山間地にある富士見町。人口は1万5000人で「毎年100人減る」(総務課)状況が続き、歯止めがかからない。町は人口維持を目指し、新規就農者や子育て世代への支援などの事業に加え、2015年度から地方創生事業としてICTを活用し、企業の誘致を進める「テレワーク事業」を始めた。

 仕事場は、遊休化した私立大学の施設を借り受け、通信環境を完備した共同事務所「森のオフィス」。1年前、町は全国の企業や個人から入居を募り、家賃補助や入居企業と地元の学生を結ぶ就職セミナーなどを企画。東京に本社がある企業など8社と個人事業主の招致に成功した。

 現在は、従業員と家族を含めた約30人が同町と周辺の町村に移住。働く社員からは「仕事の合間に自然の中を散策したり、入居企業同士で情報交換したりすると、新たな発想が生まれる」「週末は山や高原でリフレッシュできる」など、都会にはない環境で仕事ができると好評だ。

 町では「自然豊かな環境などの魅力も売りに定住を促したい。入居企業による地元雇用の拡大につなげたい」と先を見据える。
過去5年間で117人  徳島県神山町
 「町の将来に役立つ人材」を誘致し、成果を挙げている自治体もある。徳島県神山町だ。町内全域に情報通信網を整備し、空き家を改修して仕事場を確保。情報発信に優れた専門家や、商品のブランドづくりが得意なデザイナー、地域の食を支える店など起業家を呼び込み、多様な働き方ができる環境整備に力を注いだ。

 結果、人口約5700人の山村に、過去5年間で71世帯117人が移住。誘致した16社の他、カフェや飲食店、宿泊施設もでき、地元の温泉には若者や外国人が多く訪れるようになった。最近は地元産の野菜を使うレストランが開店し、テレワーク事業を展開するNPO法人グリーンバレーの竹内和啓事務局長は「町に若者の姿が増えた。農業に元気が出てきた」と手応えをつかむ。

 総務省も支援する。地方にいながら都会と同じように働ける環境を実現しようと、14年度から全国で約40のモデル地域を設け、「ふるさとテレワーク」を地方創生の切り札にしようと躍起だ。
興味あるけど・・・二の足 経営者ら
 課題もある。中堅企業では経営者や従業員の43%がテレワークに興味を持っているが、実際に導入した企業は14%にとどまることがNTTコミュニケーションズの調査で分かった。「打ち合わせがしにくい」「会話が減る」「本当に仕事をしているのか」など懸念する声もあり、移住は簡単にはいかないという実態が浮き彫りとなった。

 長野県富士見町はテレワーク事業によって今後5年間で計150人の移住者を増やそうと計画するが、「森のオフィス」を運営するルートデザインの津田賀央代表は「単に共同事務所を作っただけでは、都会のカフェや自宅で仕事をするのと変わらない。移住のメリットをきちんと打ち出すことが必要」と指摘。その上で「オフィスを仕事の場だけではなく多様な人が交流できる地域の拠点にしたい」と展望する。

 日本テレワーク協会の富樫美加事務局長は「地方での長期滞在が難しいケースは多い。移住先の地域で仕事が成り立つ“仕事の地産地消”ができるような仕組みをつくりあげていくことが必要だ」と提起する。(福井達之)

都会の仕事を農村で ICT活用 移住者・移住企業続々

《日本農業新聞》

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