専門誌の新年号は何を伝えたのか? 月刊『広報会議』に聞く 画像 専門誌の新年号は何を伝えたのか? 月刊『広報会議』に聞く

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 ◇広報・IR活動のトレンドは/ネットメディア台頭でセオリー変化
 企業や業界の情報を発信する広報・IRの重要性が増している。月刊『広報会議』編集部の上条慎編集主幹は、インターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの台頭による広報・IR活動の変化を指摘しつつも、「広報の心構えは変わらない」と強調する。広報・IRのトレンドや建設業界のPRに役立つ広報戦略とは-。上条氏に話を聞いた。
 --そもそも広報・IRの定義は。
 「広報に堅い定義付けをすると、パブリック(公)との対話による友好的な関係づくりと言えるでしょう。マスメディアを通じて話題として取り上げてもらうのも、自ら情報を発信するのも、広告宣伝もすべてその一部です」
 --最近の広報・IRのトレンドは。
 「広報の仕事について大体の方はメディア対応を想像すると思います。特にマスメディアとの関係をベテラン広報担当者たちは築き上げてきました。今もメディア対応が主要業務なのは間違いありませんが、相対的に見ると、マスメディアの影響力がかつてほど大きくはなくなっています」
 「それに代わり、力を持ち始めたのがインターネットやSNSです。例えば発言の影響力の大きい人がSNSで何かを発言をすると、それに引きずられる人が出てくる。情報伝達の手段がマスメディアだけではなくなりました。以前は、記者クラブだけに対応していればよかったのが、対応が必要な範囲がネットメディアなどにも広がっています。広報のセオリーが変わってきているのは間違いありません」
 --インターネットやSNSを活用した広報のあり方は。
 「広報ツールとして自社のウェブサイトで積極的に発信する企業や、SNSのフォロワーが何十万人もいる企業もあります。サイトやSNSは対話が必要なツールで、担当者は閲覧者やフォロワーと絶妙なやりとりをする必要があります。対話には向き不向きがありますが、それも広報活動の一環となりました」
 「一般の方への伝え方では、『お客様相談室』の対応が悪かった場合、それで口コミが広がったり、SNSが炎上したりするリスクがあります。そうしたことを含めて考えると、対外的な社会とのやりとり全般が非常に大切だと言えます」
 --社内広報の重要性も高まっています。
 「企業の業績が右肩上がりの時代は社内が自然と一つにまとまりましたが、右肩下がりになると逆の状況になります。外部から社長を迎える、企業買収や海外進出など企業がドラスティックに変わり、異なるカルチャーを持つ人同士が一緒に仕事をする機会が増えている中で、企業の中を一つにまとめるための活動を戦略的に実施する必要性が生じています。いかにして社内に風通しの良い雰囲気をつくるか。それは制度や社内報、イントラネット(企業内のネットワーク)などをどう整備するかといったことから、一時取りやめていた運動会や社員旅行の再開などアナログな手法まで、コミュニケーションを促進するという点では同じです」
 「一方で、社内外で発信する情報の内容やタイミングを統一するのも大切です。社外に対して耳触りの良いことを発信しているのに、社内の状況が明らかに異なる場合、従業員からSNSなどを通じて内部情報が漏れやすくなりました。情報はあっという間に伝わります。大企業では、社員が自社の情報をニュースで知るということもあり、そうした状況が現場の士気の低下を招きます。企業の内外で情報をシームレスに伝達するため、その全体設計を広報が把握していることが重要になっています」
 --リスク対応についてはどうでしょう。
 「謝罪会見などの危機対応は予防医療と同じです。普段から広報の責任者が役員会の末席に座って企業の方針を把握したり、有事を想定したシミュレーションをしたりする必要があります。理想は『攻めも守りも』です。メディアと企業、社員とトップを広報が情報のハブになって、平時からしっかりとつながなければなりません。しかし、言うはやすく行うは難しなのが現場の悩みどころです」
 --建設業界の広報活動をどう見ていますか。
 「日本建設業連合会が『けんせつ小町』などの情報発信に努力をしているのは評価すべきです。発信すると、フィードバックが来るので、それを反映させてまた発信するという流れを繰り返すことが肝要です。特殊な技術をかみ砕き、分かりやすい話を提供するというのも一つの方法と言えます。例えばだるま落としのように建物を壊す手法を採用した『旧グランドプリンスホテル赤坂新館』(通称・赤プリ、東京都千代田区)の解体工事は多くのメディアに取り上げられました。こうした広報は建設業の技術が成せることです。地道にしっかりやっていくことで、活動が広く伝わっていくと思います」
 --建設業界のPRに有効な方法はありますか。
 「業界内のユニークな人や変わった経歴を持つ人を取り上げるのもいいでしょう。広告塔のような形で、最近流行のテレビの解説番組などにそうした方々が出演して技術や活動を発信するなど、伝える切り口はさまざまです。地道な広報活動の一方で、分かりやすく興味を引くネタを探すことも大切です」
 --広報に携わる人たちへのメッセージを。
 「広報の心構えとして言われるのは、組織と社会の間に立ち、窓口になるということです。もちろん広報は自社を守らなければならない立場ですが、社会から自社がどう見られているかをトップに進言したり、企業情報をしっかりと外部に発信したりすることが重要です。昔もメディア環境が変わった今も、これは変わることがありません。建設業界が抱える課題について、『コミュニケーションである程度解決できる、貢献できる方法は何だろう』と考えて行動できる人が出てくるとよいと思います」。
 (かみじょう・まこと)1996年神戸大学経営学部卒業後、宣伝会議入社。『宣伝会議』編集部、関西本部、『アドバタイムズ』編集長、『広報会議』編集長などを経て2016年4月から現職。千葉県出身、43歳。
 《『広報会議』とは》
 総合出版社の宣伝会議(東京都港区、東彦弥社長)が発刊する月刊専門誌。2005年の創刊以来、広報・IRの専門知識や最新情報、PR戦略、ブランドを守る危機管理方法など、企業や自治体の若手からベテランまで幅広い層の広報担当者らに役立つ情報を提供している。

2017新年号-伝える力を考える/月刊『広報会議』・上条慎編集主幹に聞く

《日刊建設工業新聞》

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