マレーシアの今昔~めざましい経済成長とジレンマ~ 画像 マレーシアの今昔~めざましい経済成長とジレンマ~

海外進出

 けれどもまた、現地に展開してきた日系企業の状況を見れば、単なる低コスト生産基地の位置づけを超え、しっかりした経営体制と存立基盤を確保しつつあるようにも思われる(そうでないところは撤退転進してしまった訳なので、当然ではあるが)。

 一つには、日本サイド、中国、東南アジアといった各生産拠点や開発拠点の役割分担が明確になってきていることであり、市場との関係がグローバルな経営体制のなかでしっかり展望されている。マレーシア政府も、「東南アジアでの統括拠点」としてのマレーシア立地を奨励推進している。生産サポート体制が整ってきていることも見落とせない。

 いまひとつは、各企業での現地採用の経営幹部や現場技術者らが確実に育っていることである。こうした人たちは専門的教育を受け、また日本での経験も積み、しっかりと現地の経営を支え、しかも日本的な労使関係と職場のあり方を生かし、新たな開発やカイゼン活動などを大いにすすめている。もちろんいまも「ジョブホッピング」の問題がなくなったわけではないが、日本企業で働くことが当人や家族たちの誇りとなり、高いモーティべーションをもって仕事を担っていることがよくわかる。また、外国人労働者たちも意欲的に現場を支えていることも印象的であった。

 マレーシアは日本のリタイア世代の暮らす場としても注目されているとは、よく聞くところである。それもわかるが、なによりこの20年あまり、現地にあって経営を支え、マレーシアの経済社会に貢献してきた日系企業の関係者の方々のご努力というものには、改めて感銘を受ける。それはもちろん、日本の経済社会のいま、そこにある課題そのものなのだと言わねばならないだろう。


●三井逸友(みついいつとも)
嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科長・教授 。慶應義塾大学経済学部大学院を修了後、駒澤大学、横浜国立大学に勤務(横浜国立大学名誉教授)。嘉悦大学には大学院発展のために赴任し、2015年4月に研究科長に就任する。日本中小企業学会の常任理事で、07年から約3年間に渡り同会長を務める。主な著作に『中小企業政策と「中小企業憲章」』『21世紀中小企業の発展過程』がある。


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《三井逸友》

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