三代目社長のHANJO記:第2話――従業員の心をつかむ社内改革 画像 三代目社長のHANJO記:第2話――従業員の心をつかむ社内改革

人材

 ビジネスにおけるジンクス「苦労を知らない三代目が会社をつぶす」。だが一方で、改革を進め会社を成長させる三代目社長がいる。「三代目」を名乗るダンス&ボーカルグループがヒットチャートを席巻するいま、時代が三代目の活躍を求めているのかもしれない。連載「三代目社長のHANJO記」では、新たな発想やマネージメントで歴史をつなぐ中小企業経営者の姿を伝える。第2話は「中野BC株式会社」中野幸治社長のHANJO記である。

■主力の日本酒部門で大量生産からの脱却

――1932年の中野醤油店の創業以来、醤油をはじめ焼酎、日本酒、果実酒、みりん、梅果汁、梅酒などのリキュールなどを幅広く製造・販売してきた中野BC。その経営方針が大きく変わろうとしている。陣頭指揮を執るのは三代目の中野幸治社長だ。

 かつて、同社の日本酒部門は大量生産による低価格路線を走り、和歌山でもトップクラスの業績を上げていた。しかし、中野社長はこの状況に危惧を覚える。若者の日本酒離れが進む今後は国内市場も縮小し、このままでは存続が危ぶまれる事態に陥りかねない。酒蔵として生き残るために、必要だったのは中野BCならではの独自性だった。

中野 実際に現場のスタッフと話し合ってみると、みんなも私と同じように危機感を抱いていることがわかりました。そこで、パック酒のような家庭の晩酌向け商品は低価格路線を維持しつつ、純米酒を中心とした特定名称酒については、昔ながらの手仕込みに戻すよう、当時の社長だった先代に直訴しました。路線変更を受け入れてもらえたのは、現場のスタッフなどから賛同を得られていたことが大きかったと感じています。

 弊社では修業を積んだ社員が酒の仕込みを手がける社員蔵人制を、先代の時代から導入していたのですが、私も杜氏として社員蔵人とともに酒造りを一から見直しました。ただ、弊社の日本酒造りのコンセプトは、“中野BCらしい酒を目指すこと”。急に「辛口の酒を造れ」と言っても、その対応は難しかったと思います。今までを否定するのではではなく、まずは今の技術を深掘りすること。その延長に技術の幅が出てくれば、さまざまなニーズに対応した酒造りができていくと、入社当初から常々思っていました。

 そこで手始めに純米酒の味をよりどっしりとしたものに変えました。同時に瓶についても関係部署の担当者と話し合い、風格が感じられるイメージにしようと、従来の青色の瓶から茶色へ変更したのです。その結果、純米酒の売上が従来の3倍に伸びました。

 中でも、「大吟醸 紀伊国屋文左衛門 黒」はモンドセレクションにおいて4年連続で最高金賞を、「純米吟醸 紀伊国屋文左衛門」は2年連続で金賞を受賞。日本酒部門全体では家庭向けのパック酒の比率がまだ高いですが、それでも特定酒の比率が徐々に大きくなり、ブランド力の強化につながっています。

 ここ数年は、“造り手がお客様と向き合っていく機会”を増やしています。最初のとっかかりとしては、弊社の酒蔵内で毎年開催している「にほん酒BAR」と「梅酒BAR」というイベント。これは中野BCとその商品、そしてスタッフを知ってもらうことが目的です。その中で、必ず造り手がブースに立って、直にお客様の反応を知ることができる環境にしています。実際、私や営業サイドがお客様の意見をうかがった際、開発や製造の現場への伝え方が悪かったり、心に響かないこともあります。ですので、まず“自分達がお客様に直に知ってもらう”環境づくりに取り組んでいます。

《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》

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