Made in USAの「山田錦」。米国産清酒はホンモノか? 画像 Made in USAの「山田錦」。米国産清酒はホンモノか?

海外進出

 米の生産量が全米の半分を占めるアーカンソー州で、一風変わった米が収穫された。酒造好適米の「山田錦」や「五百万石」「雄町」だ。試験栽培は5年ほど前から始まり、作付けは今年、45ヘクタールに広がった。収穫後は米国内の大手酒造メーカーや、各地の「地酒」メーカーに供給される。米国への日本酒(清酒)輸出が増える中、高級な酒米を使った米国産地酒と競争が始まる可能性が出てきた。
消費者関心、作付け増加 日本産 ライバルに 米国
 「日本の品種は昔から栽培してきたから、あまり問題はなかった」

 同州イングランドで長粒種米を中心に1400ヘクタールを経営するクリス・イザベルさん(60)は、収穫前の酒造好適米の田んぼを見渡して満足げに語った。

 イザベルさんは、少なくとも20年前から「コシヒカリ」の栽培を始め、その数年後には日本に輸出。だが、「同じ米農家をあまり困らせたくない」と対日輸出をやめた。それでもメールアドレスは「コシヒカリ」と堂々と名乗っているところに、日本品種に懸ける彼の意気込みがうかがえる。

 酒造好適米の栽培に着目したのは数年前。昨年から面積を拡大し、今年は販路を拡大した。カリフォルニア州にある大手の日系酒造メーカーに「山田錦」などを売っている。イザベル農場の米販売価格は、玄米45キロで171ドル、日本円で約1万8000円になる。「普通の長粒種に比べれば10倍ほど高いが、日本の相場の半分ぐらい」とイザベルさんは説明する。10アール当たりの収量に換算すると、もみで560キロ、玄米なら420キロになる計算だ。

 米国育ちの米で造る清酒が盛んになっている背景には、「清酒に対する味覚が洗練されてきた米国の消費者が、原料の酒米にまで関心を払うようになってきたことがある」とイザベラさん。

 課題は、高品質の酒米の入手だ。そこに白羽の矢が立ったのが、日本の米作りに詳しいイザベルさんというわけだ。「私の酒米で、数年以内に米国産清酒の品質は大きく向上するだろう」。イザベル農場に刺激され、米国内の酒米生産は、さらに拡大する可能性を秘めている。

 カリフォルニア米を原料とした、米国産の清酒生産が始まったのは1980年ごろ。現地の日本食レストランや日系スーパーなどで需要が増し、日本の大手酒造メーカーが相次いで進出した。

 現地の状況に詳しい国税庁の担当者によると、「米国内の需要の8割はこうした現地生産で賄われ、残りの2割が日本からの輸出」(酒税課)とみる。現地で好まれるのは甘口の安価な清酒で、小売店などでは米国産が750ミリリットルで800円程度から販売されている。

 一方、日本から輸出されるのは「山田錦」を使った高級な純米吟醸など高価な商品が多い。2015年の日本からの日本酒輸出額は140億円と前年の22%増。10年前に比べれば2倍以上だ。うち、米国向けが50億円で4割を占め、圧倒的なトップを占める。

 高品質な米国産清酒が広く出回ることで“本家”日本産の価値が高まり、日本酒の輸出に拍車が掛かるのか。それとも、実力を上げつつある米国産が普及し、日本産の手ごわい競争相手となるのか――。米国で進む酒米生産は、新たな波紋を広げそうだ。(特別編集委員・山田優)

Made in USA 「山田錦」も醸造も 地酒じわり拡大

《日本農業新聞》

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