【社内コミュニケーションの秘訣】不良を優等社員に変えた教育 画像 【社内コミュニケーションの秘訣】不良を優等社員に変えた教育

人材

 時代を生き抜く強い中小企業とは何でしょう? すばらしい商品やサービスはもちろんですが、そこにいたる会社のなかでの社員どうしのコミュニケーションが、本当はいちばん大切なのかもしれません。仲間と笑い合える中小企業が、今元気です。「小さい」「予算がない」「時間が足りない」といった悪条件を、彼らはどんな発想で乗り越えていったのか? 明るく楽しい会社やリーダーの活動から、解き明かしていきます。第三回は、F1カーのエンジンパーツなどの表面処理を手掛ける「深中メッキ」の深田稔社長です。かつて社員を3度ヘッドハンティングされるほどの優れた社員教育のノウハウを解き明かします。

◆第三回 深田稔さん(52歳)◆
88年に獨協大学 経済学部 経済学科卒。同年4月に明治製菓株式会社に入社する。90年に退職すると、深中メッキ工業株式会社に入社。

■あいさつを納得させる、そこから始まる人間関係

――中小の町工場ではなかなか時間が取れずに、社員教育が進んでいない企業もあるようです。その中でも、深中メッキさんでは特に社員教育に力を入れていますね。

深田 私は零細企業ほど社員教育を重視すべきだと考えています。大きな理由は2つあり、ひとつは社員の離職率が高いことです。私は90年代後半に先代から事業を引き継ぎましたが、当時はまだバブルの名残があったので、求人については売り手市場でした。製造業は3Kの最たるものなので、入社した新入社員がすぐに辞めてしまうことも、当時はそう珍しくありませんでした。

 もし辞めた社員がほかの会社に採用されたとして、その態度が悪かったら、「深中メッキはどんな社員教育をしているんだ」といわれるでしょう。こういう話は、すぐに業界に広がります。メッキの技術うんぬんよりも、まず人として育てることが大事だというのが、私の持論です。

 また、もうひとつの理由としては、小さい会社では社員の間の距離が近いことがあります。大企業であればほかの社員と仲が悪くなっても、異動や転勤で離れられます。ですが、社員が9名しかいない深中メッキでは、ここに勤めている限り、社員どうしの関係は続いていくわけです。

――社員の仲の悪さを放置すると、離職率が高まる原因にもなりますね。社員教育の第一歩として、深田さんはまず何に取り組まれたのでしょうか?

深田 やはりいちばん最初はあいさつからでしたが、日常化させるには苦労しました。当時の深中メッキには元は不良だった社員が多かったのですが、彼らは“人の言うことを聞かない”という習慣が染みついています。「なぜ、あいさつをしなければいけないのか」と言うわけですが、そのときは私も“重要だから”という程度の認識しか持っていませんでした。

 あいさつはなぜ重要なのか? 本やネットで調べてみましたが、なかなか明確な答えはありません。ただ、あいさつの効果とは何かと考えると、された相手が良い気持ちになるわけです。一方で、いちばんされて嫌なことは何かと調べると、これは心理学の本に「無視」であると書かれていました。

 つまり、あいさつとは相手の存在を確認し認める行為で、それがうれしさにつながっているわけです。「だから、あいさつをしようじゃないか」と、社員に話をしたところ、そこでようやく全員があいさつという行為を納得できました。後は自然と社内で、あいさつが広まっていきましたね。続いて電話の受け答えなどを、ひとつひとつ教えていきました。

――あいさつや電話の受け答えというのは、社外に向けたコミュニケーションでもあります。一方で、会社への帰属意識を高め、離職率を下げるには、社内でのコミュニケーションも活性化させる必要がありそうです。

深田 あいさつは社内でのコミュニケーションでも有効です。お互いの存在を意識することにつながるわけですから、相手から見える自分のことを考えるきっかけになります。もし、仲が悪くなりそうなことがあっても、一歩引いて相手との今後の関係性を考えられる。これは、自分本位な考え方をやめて、会社全体のことを考えることにもなります。

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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