【水産流通革命:2】鮮魚の産直開拓、漁協の関係をどう築く? 画像 【水産流通革命:2】鮮魚の産直開拓、漁協の関係をどう築く?

インバウンド・地域活性

【記事のポイント】
▼仕入れ先の魚の情報公開を徹底する
▼クール便の高い輸送費は必要コストと考える
▼仕入れ先との関係を維持するために、取引漁業者数は増やし過ぎない
▼研究熱心で意欲的な漁業者が飲食チェーンに選ばれる


■6店舗経営の中小居酒屋チェーンが築き上げた「9割産直」

 産地直送で他店と差別化したいが、さまざまな手間を考えると、踏み出せない。そう考える飲食店主はおそらく少なくないだろう。東京と千葉に6店舗の居酒屋を経営する洋伸は、リーマンショック後の09年、既存の和食居酒屋を全店舗、産地直送の新鮮な魚がウリの鮮魚居酒屋に切り替え、その一歩を踏み出した。それから7年。いまや全店舗で扱う魚の9割を、北は北海道から南は高知土佐清水までの産直が占め、新鮮さと味を武器に、愚直に独自の生き残り策を模索し続けている。

 千葉県柏市に本社を置く同社。経営する居酒屋の屋号は、四谷や恵比寿などに店を構える「魚一商店」、新松戸の「魚ざんまい 魚三郎」、稲毛の「魚七鮮魚店」の3つがあるが、いずれもウリは新鮮な魚介だ。

 中でも200人前後の大宴会も可能だというJR南柏駅から徒歩1分の旗艦店「魚一商店 南柏総本山店」では、名物のひとつの活イカが泳ぐいけすが置かれ、通路沿いには各地の生産者の写真を入れた大きなパネルが所狭しと並ぶ。ほかにも、天井にはイカ漁に使う大きなランプや、魚を入れていたとみられる木箱の板。テーブルに置かれたメニュー表の表紙には、これまた取引先とみられる漁業関係者の写真が14枚――。店内のどこもかしこも産直がPRされている。

 同社が徹底しているのは、そのメニュー表だ。ラミネート製と紙製の2種類あり、紙製のメニュー表は毎日刷り直して、産直の魚か市場の魚がわかるようにしている。たとえば刺身の盛り合わせが2人前1555円(税抜き)だとしたら、まず、メニュー表の上段に、盛り合わせに使われる魚を、「本マグロ脳天、サケ、イナダ(ブリの幼魚)、カンパチ、コショウ鯛」といったふうに全種類を明記。その下段で、「外洋産 生インドマグロ」「沼津直送 真鯛」といったふうに、産直かそうでないかを区別して記載し、料理の配膳の際にも口頭で伝える徹底ぶりだ。取引先が変われば、ラミネート製のメニュー表もつくり直す。

「だってお客さんも、どこで捕れた魚か知れたほうが安心だし、おいしく感じるでしょう? 毎日、仕入れ先は変わるので、メニュー表も毎日書き換えないと」

 柴田賢一常務はこともなげに話す。和食居酒屋から産直鮮魚居酒屋に切り替えた09年は、食品偽装問題が世間で注目された時期だったこともあり、当初から一貫して、使う魚の情報公開は徹底してやってきたという。仕入れは各店の料理長に任されているが、すべての店舗では営業前に、その日、客に出す魚の産地を打ち直したメニュー表を刷新するのが日課だ。

 もちろん、洋伸側にとって、「9割産直」にはデメリットもある。コストだ。いわゆるクール便の輸送費は、ここ2年ほど、輸送業者側で値上げの傾向にある。それでも「譲れない生命線」だとして、鮮度が良い産直の割合は減らさない方針だという。

■中小居酒屋チェーンが1道7県の漁協や仲卸を捕まえるまで

 洋伸が現在、鮮魚の産地直送取引を行なう先は1道8県。その取引相手は漁協や各地域の仲卸だ。同社ホームページでも公開をしているが、北海道知床からは水ダコ、函館からはウニ、ホッケ、鮭などを仕入れる。6店舗でひと月に2トンは消費するという浜焼きで人気のホタテ貝は、青森県野辺地町の漁業組合から。銚子からは金目鯛や松輪の活イカを、三重・南伊勢からはヒオウギ貝を、高知県土佐清水からは清水サバをと、各地から旬の魚が送られてくる体制を取る。外洋ものの入手と不漁に備えて、築地の仲卸2社とも取引を行なっているようだ。

 中小の居酒屋チェーンが、なぜここまでの取引先をつかまえることができたのか。産地との取引や調整を一手に任されている柴田常務によると、まず第一に赤澤伸社長の強い思いれがあったという。

《塩月由香/HANJO HANJO編集部》

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