【HJ HJ EYE:6】中小企業のメッカ、ここにあり。 画像 【HJ HJ EYE:6】中小企業のメッカ、ここにあり。

IT業務効率

――頭でっかちな反発が予想されますが……。

浜野 いえいえ、彼らは変にガッツがあるんですよね。「営業に同行させてください!」と、向こうから言ってきました。

――その反応は、浜野さんにとってうれしい驚きだったのではないですか?

浜野 しめしめ、という感じですね。とはいえ、そう何度も社員に同行させるわけにもいきません。ただ、学生の姿を見ていたある会社の副社長が、うちに仕事を出すように内々に指示を出してくれました。結果的に、学生が浜野製作所の営業マンになったわけです。

――インターンの大学生が営業マンとして機能したわけですね。いまどき珍しい話かもしれません。

浜野 先ほどの副社長は社内でこう話したそうです。「我々には長い付き合いのある取引先があるが、その多くは社長も従業員も高齢で後継者も育っていない。そんななか、一橋大学の学生が営業に来るような会社に仕事を出さなかったら、これからいったいどこと付き合えばいいんだ」と。

 その会社とは最初は1万円程度のお仕事から始まりましたが、今でも取引は続いています。その後、インターンをしていた一橋の学生は浜野製作所に就職しました。今でも毎年ひとり、ふたりはインターンの子がうちに入りたいと言ってくれます。求人募集に何十万も支払うよりは、よほど良い投資だと思いますね。

<Profile>
浜野慶一(はまのけいいち)さん
84年に東海大学政治経済学部を卒業し、同年に板橋区の精密板金加工メーカーに就職。93年創業者の跡を継ぎ、2代目として浜野製作所代表取締役に就任する。02年に一橋大学・関満博教授の協力のもとで産学官連携センターを設立し、電気自動車 「HOKUSAI」、深海探査艇「江戸っ子一号」などの開発を手掛ける。経済産業省・文部科学省の産学人材育成パートナーシップ経営管理人材分科会委員、東京商工会議所墨田支部副会長などを兼任。


■ 取材を終えて
ものづくりの町として、そして小規模な企業が集まる町として発展してきた東京都墨田区。その町で長年、中小企業の価値とプライドの向上を進めてきた中心人物が浜野さんだ。下請け仕事からの脱却、若者らの人材確保、スタートアップ支援やインキュベーション事業、産学官連携、海外との交流・・・、枚挙にいとまがないほどの活動からは、まさに獅子奮迅の経営者の姿が浮かび上がる。浜野製作所を訪れてわかるのは、社員すべてに温かな人間性を感じることだ。帰り際、門口に立ち、私たち取材陣の姿が見えなくなるまで見送ってくれた浜野さん。「人は宝」とは中小企業を語る際によく使われる言葉だが、原石を磨き上げる経営者がいて初めて社員は宝になるのだという感慨が、自然とわいてきた。
(HANJO HANJO 編集長・加藤陽之)



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