鬼怒川破堤から1年、ハード・ソフト一体となった取り組みへ 画像 鬼怒川破堤から1年、ハード・ソフト一体となった取り組みへ

インバウンド・地域活性

 ◇さらなる悪条件への備えも
 関東・東北豪雨による鬼怒川流域での洪水という危機に対し、官民の応災力が試された今回の災害。破堤した上三坂地区での対応から、その典型が見て取れる。
 国土交通省関東地方整備局は、シミュレーション訓練による蓄積を生かして、資材の備蓄状況などを考慮しつつ応急復旧計画を立案。現地では、下館河川事務所の淺野貴浩鎌庭出張所長らの指示を受け、地元企業が夜を徹してトラック旋回箇所の整備など前段取りに取り組んだ。そこに鹿島と大成建設が出動し、2週間で堤防の応急復旧を成し遂げた。関東整備局の横坂利雄河川部河川工事課長は、「段取りする十分な時間も無かった。建設業界に対しては、頑張ってもらったというイメージしかない」と話す。
 だが、関東整備局には反省点もある。一つが、検査体制だ。止めることなく応急復旧を進めるため、発注者も交代制でチームを組み、3時間ごとに出来形確認などを行った。各班ごとに全員が入れ替わる編成にしてしまったため、引き継ぎが十分にできず、監督員によって判断が違ってしまう場面もあった。今後は人員を少しずつ入れ替える編成に改め、継続性を保つ方針だ。
 もしも、悪条件がもっと重なっていたら…。そうした想定も必要だろう。今回は、最下流部ではなかったため、水が引く時間も早かった。長期間にわたって水が流れ続ける状況では、堤防を閉じる作業が格段に難しくなる。雨の降り方も大きな分かれ道だ。鬼怒川流域に集中していた豪雨が、近接する小貝川流域にまで広がっていたら、被害は拡大した恐れがある。
 「あと1時間豪雨が続いていたら、2カ所目の決壊が出ていたかもしれない。堤防があれば大丈夫と思われることは非常に危険だ」。下館河川事務所の里村真吾所長はそう警鐘を鳴らす。関東整備局が進める「鬼怒川緊急対策プロジェクト」では、集中的な河川整備とともに、タイムラインの活用や確実な避難を促す情報発信などソフト施策にも力を入れている。
 その原点となるものが、鬼怒川破堤を教訓に国交省が策定した「水防災意識社会再構築ビジョン」。「施設では守り切れない大洪水は必ず発生する」という視点を打ち出し、ハードとソフト両面からの対策を全国的に展開している。
 ハード面では、洪水を安全に流す従来型の堤防整備に加え、「危機管理型」を導入。破堤までの時間を少しでも延ばすため、アスファルトによる堤防天端の保護や裏のり尻のブロック補強を集中的に行う。20年度までに総延長3000キロでハード対策を実施する。
 さらに、109水系の直轄河川で沿川市町村と連携した減災対策協議会などを立ち上げ、ハード・ソフト一体となった取り組みを進めている。石井啓一国交相の指示により、県管理河川や2級河川にも広げていく。
 今年も、台風10号などで甚大な被害が発生している。安全・安心を支えるハードと、想定を超える事態が起きても命だけは守るソフト施策。どちらが欠けても、災害列島では生きていけない。鬼怒川破堤が突きつけたそうした事実をどう生かしていくのか。これから問われていくことになる。=5面に関連記事
 (編集部・「豪雨災害」取材班)

試された応災力-鬼怒川破堤から1年・下/ソフトと連動し命守る

《日刊建設工業新聞》

編集部おすすめの記事

特集

インバウンド・地域活性 アクセスランキング

  1. 「高校野球」はなぜ、日本最大の人気コンテンツになりえたのか?

    「高校野球」はなぜ、日本最大の人気コンテンツになりえたのか?

  2. 東芝大阪工場跡開発、スマートコミュニティ構想実現へ

    東芝大阪工場跡開発、スマートコミュニティ構想実現へ

  3. 陶磁器生産日本一の瑞浪市周辺を巡るバスツアー、地元工場が企画

    陶磁器生産日本一の瑞浪市周辺を巡るバスツアー、地元工場が企画

  4. 神奈川大学「みなとみらいキャンパス」、街と大学がつながる都市型を構想

  5. リニア新幹線、南アルプストンネル最後の工区着工へ

  6. 五輪後の建設市場は「減少」か「横ばい」…アナリストに聞く

  7. 名古屋城天守閣、木造復元できるのは世界でこの城だけ!

  8. 北海道新幹線手稲トンネルの計画変更/高架橋部分を地下化、「札樽トンネル」に

  9. 成田空港、周辺自治体が第3滑走路新設に理解

  10. 品川駅周辺まちづくり、品川新駅やリニア開業で再開発が加速!

アクセスランキングをもっと見る

page top