鬼怒川破堤から1年。報酬や人材不足など課題 画像 鬼怒川破堤から1年。報酬や人材不足など課題

インバウンド・地域活性

 関東・東北豪雨による鬼怒川の決壊で市域が広範囲にわたって浸水した茨城県常総市。大きく報じられた大手ゼネコンによる破堤箇所の緊急復旧工事の陰で、自らも被災しながら、一刻も早い復旧に向け、市街地に押し寄せたがれきやごみの撤去、荒廃した田畑の再整備などに汗を流したのが地元の建設会社だ。
 県と災害協定を結んでいる茨城県建設業協会常総支部(中川原勇支部長)の山本宗一副支部長は「われわれは縁の下の力持ち」と地元企業の存在意義を語る。
 同支部は、破堤直後から国道294号を通行止めにする作業やがれきの撤去、歩道の舗装などさまざまな活動を展開。山本副支部長は「(市街地に)流れ込んだごみの処理に一番骨が折れた」と振り返る。県の要請を受け、9月27日~10月4日に会員企業から2トンダンプ112台と運転手112人などを手配し、市街地にあふれ返ったごみを回収。側溝に詰まった土砂、道路に流出した稲わらやヘドロの除去にも奔走した。
 復旧の第2段階として、田畑の再生にも取り組み、破損や土砂の詰まりがあった用・排水路の再整備を春の作付けまでに完了させた。その結果、市内の農家はこの秋も無事に作物を収穫できる。
 神達岳志市長は「重機を持ち、土工事に慣れている地元企業の機動力が迅速な対応につながった」と高く評価する。
 市にとっては未曽有の水害だったが、市建設課は「対応は地震など他の災害時と同様だった」と語る。地元建設会社は、本業で培ってきた技術力と、平時から県・市などと連携して取り組んできた訓練の延長で十分な応災力を発揮した。一方で、地元企業が今後も「地域の守り手」として持続的に災害対応を担うための課題も浮き彫りになった。
 山本副支部長は「重機を操作できる人材が不足していた。もっとできることはあった」と歯がゆさをにじませる。災害時には、被災地で実際に汗を流して復旧作業に従事する技能者の確保が特に重要になる。
 災害協定を結ぶ自治体によっては、復旧活動の報酬は人件費だけで、出動した重機の実費が支払われない状況もあった。地元企業は「地域貢献なので、初動対応は支払いがなくても仕方ない」(中川原支部長)と腹をくくるが、緊急時でも適正な報酬を得られる仕組み作りは地元企業の疲弊を防ぐ意味では肝要だ。
 地元の建設会社には、住んでいる地域が被災した場合、緊急対応とともに、本復旧まで担いたいという気持ちがある。入札契約の透明性と公平性の確保を前提とした上で、非常時の行動力と対応力に報いる措置として、指名競争入札や特命随意契約による発注を期待する声は小さくない。非常時の契約ルールなど地域の「応災の担い手」を確保し続ける枠組みの検討も必要になりそうだ。
 水害から1年がたつ常総市内では、倒れたフェンスがまだ残されていたり、住宅の新築工事があちこちで進められていたりと復興は道半ば。今後も地元企業が果たす役割は大きい。

鬼怒川破堤から1年・中/地元企業、被災しながら復旧に汗/持続的な対応に課題も

《日刊建設工業新聞》

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