鬼怒川水害から1年、関東整備局が堤防決壊・いっ水個所で対応完了 画像 鬼怒川水害から1年、関東整備局が堤防決壊・いっ水個所で対応完了

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 ◇用地取得や調査・設計も進む
 昨年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川が決壊して間もなく1年を迎える中、関東地方整備局による鬼怒川緊急対策プロジェクトが進展している。堤防が決壊した茨城県常総市の上三坂地区では、5月に堤防復旧工事が完了。大規模に水があふれる溢水(いっすい)被害が起きた同市の若宮戸地区(同)と茨城県下妻市の前河原地区でも、第1期の築堤工事がおおむね完成し、「昨年のような出水が起きても大丈夫な状態にできた」(下館河川事務所)という。これから整備する堤防なども用地取得への調整や調査・設計が始まっている。想定外の事態を見据え、ソフト対策にも力を入れている。
 同プロジェクトは、甚大な被害が発生した鬼怒川下流域の茨城県区間で、堤防整備などのハード事業と、確実な避難の実施といったソフト対策などを総合的に進める取り組み。関東整備局や茨城県、常総市ら7市町が連携して事業を展開している。
 関東整備局は、延長44・3キロの区間を対象に堤防のかさ上げや拡幅、河道掘削などを展開する。事業期間は15~20年度で、総事業費約580億円を見込む。茨城県は17年度までに八間堀川などで堤防整備や河道拡幅を行う。事業費は合計約23億円。
 堤防が決壊した上三坂地区では、決壊から約9時間後に作業に着手し、鹿島と大成建設の施工により2週間で二重締め切り工までの応急復旧工事を完了させた。地元の建設会社が災害協定に基づいてトラック旋回箇所などの段取りをしたことも応急復旧作業が円滑に進んだ要因という。その後、鹿島と大成建設の担当で今年1月には本復旧工事に取り掛かり、5月に現地での作業を終えた。
 若宮戸地区と前河原地区では、昨年の洪水の水位よりも50センチ高くなる規模まで堤防を整備した。今回は第1期工事の位置付けで、沈下状況などを確認した上で第2期工事を進める。若宮戸地区では約1・6メートル、前河原地区では約1メートルの盛り土を追加で行う予定だ。
 同事務所によると、これまでに34件の工事を契約済みで、現段階でさらに13件が契約予定となっている。ほかにも多数の工事が発注される見通しで、構造物関連の地質調査を20カ所、樋管設計を20カ所で実施中。鬼怒川の両岸の築堤護岸の詳細設計も進めている。
 今回の堤防整備箇所には私有地が多数あることから、初弾の用地境界確認を今年5~7月に行った。対象面積は約40ヘクタールで、延べ約1000人の地権者が関係しているという。今後も準備が整った段階で用地境界確認を順次行っていく。5カ年という短期間で工事を進める必要があり、用地交渉がそのカギを握ることから「できるだけ早めに(関係権利者に)事業説明を行っていきたい」(同事務所)としている。
 併せて関東整備局などが力を入れているのが、ソフト施策だ。最大クラスの洪水が発生した際にも逃げ遅れを防ぐとともに、社会経済被害の最小化を図ることを目的に、関係自治体などと「鬼怒川・小貝川大規模氾濫に関する減災対策協議会」を立ち上げた。ハザードマップの作成・周知や防災教育の実施、確実な避難に向けたタイムライン作成、訓練実施などに取り組んでいる。
 今月5日には、タイムラインに沿った洪水時情報伝達演習を常総市で実施した。洪水情報を緊急速報メールで地域内の人に発信する取り組みも全国に先駆けてスタートさせた。同事務所の里村真吾所長は「一定の安全度は確保するが、昨年以上の洪水が来たら堤防を越えてしまうかもしれない。油断してしまわないよう(地域に)語り掛けていきたい」と話している。

鬼怒川水害から1年/関東整備局/堤防決壊・いっ水個所で対応完了

《日刊建設工業新聞》

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