三代目社長のHANJO記:第1話――町工場再生と航空宇宙への道 画像 三代目社長のHANJO記:第1話――町工場再生と航空宇宙への道

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 ビジネスにおけるジンクス「苦労の知らない三代目が会社をつぶす」。だが一方で、改革を進め会社を成長させる三代目社長がいる。「三代目」を名乗るダンス&ボーカルグループがヒットチャートを席巻するいま、時代が三代目の活躍を求めているのかもしれない。新連載「三代目社長のHANJO記」では、新たな発想やマネージメントで歴史をつなぐ中小企業経営者の姿を伝える。第1話は「株式会社由紀精密」大坪正人社長のHANJO記である。


■自社の強みを活かした情報発信で、実家の”町工場”を再生する

――倒産寸前まで傾いた経営を、わずか10年で飛躍的に回復させた町工場がある。神奈川県茅ヶ崎市で精密部品の切削加工を行う「由紀精密」だ。1950年創業。祖父、父と二代続けて公衆電話機の内部に使われるネジを製造していた同社は91年、バブルを境に、携帯電話の普及により右肩下がりに受注を減らしていく。

 2000年代に入ると、会社の売上の8割をわずか2社が占めるほどに取引先が先細る。さらに、その取引先からの受注も徐々に減り、立て直す機会を失っていた06年。ベンチャー企業で働いていた長男の大坪正人氏が、会社を手伝いたいと帰ってきた。

問い1:実家の町工場をどのように立て直そうと思ったのですか?
答え1:「まずは自社の強みを認識し、コーポレートアイデンティティを一新して、会社のブランドイメージを作りました」

 前職で最後に携わったのが、M&Aした会社を立て直すコンサルタント業務だったからかもしれませんが、入社後すぐにイメージ刷新に着手しました。前職の会社の後輩のデザイナーに相談して、ロゴデザインを一新し、展示会に出展しました。

 資金繰りは本当に苦しい状態でした。もともと営業担当者を置いていないような、取引先に言われた通りに物を作る経営を続けていたので、受注が減ってからは父が個人で借り入れをして会社に貸し付けをし、経営を支えていました。

 だからこそ情報の発信に最大限、注意しました。銀行がお金を貸してくれなくなったら会社は終わりです。でも新聞に載るような企業には、銀行はお金を貸してくれる。どうしたら取り上げてもらえるか。当時は従業員20人くらいの小さな会社でしたが、会社から発信する情報はデザイナーにしっかり見てもらい、情報のクオリティが統一されるように努めました。

<その結果は・・・>

 いまでこそ、銀座の百貨店「和光」に大坪社長が企画から携わった純国産の1千万近い腕時計が置かれ、その過程が書籍になり、新聞に社長のコラムが連載されるなどメディア露出の多い由紀精密。しかし、同社ホームページの「ニュース」の欄の07年~09年をぜひ一度見てほしい。最初の4年間でいかに知恵を絞ったか、情報発信と立て直しのヒントが隠れている。同社の代名詞「『研究開発型』町工場」は、言い得て妙だ。

《塩月由香/HANJO HANJO編集部》

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