「高校野球」が教えてくれる、サービス業型産業の成長性 画像 「高校野球」が教えてくれる、サービス業型産業の成長性

インバウンド・地域活性

 今年5月に出版された、中島隆信さんの『高校野球の経済学』(東洋経済新報社)が評判だ。高校野球はなぜ、長きに渡って日本人の心をつかんできたのだろうか? そのシステムの不思議を経済学の視点で分析したのが本書である。

 スポーツ分野での日本最大の人気コンテンツといっても過言ではない高校野球。しかし、高校野球の仕組みはどう考えても不合理である。にもかかわらず日本に不可欠な存在であり続けている。それは中小企業経営のあり方に似ているとはいえないだろうか。中島さんが教鞭をとる慶應義塾大学にお邪魔して話を聞いた。

■高校野球のように付加価値によって儲ける発想が重要

――「『高校野球』はなぜ、日本最大の人気コンテンツになりえたのか?」でもお話しいただいた通り、高校野球そのものは非常に収益性の低いイベントです。一見あまり合理的でないように思える厳しいルールも数多くあります。それにもかかわらず、携わりたいと考える企業や個人が少なくありません。なぜなのでしょうか。

中島 見えにくいところで、その分のベネフィットを受けられる仕組みになっているからでしょう。代表的な例として阪神電鉄があります。8月はプロ野球にとっても掻き入れ時。所有する甲子園球場を阪神戦に使えば巨額の入場料が入ってくるはずです。しかし、阪神電鉄はこの時期に無料で高校野球に甲子園球場を貸し出しています。理由は、全国高校野球選手権大会は1日4試合行われるため、阪神電鉄は膨大な数の乗客を集めることができるからです。

 またNHKも放映料を払うことはなく、全試合を自費で放送しています。これは職員に夏休みを与えるためです。全国高校野球選手権大会を放送している時間、新しく番組を制作する必要はありません。損をしても最終的には得をとれる仕組みになっているのです。

――例えば中小企業も連携すれば似たような仕組みを作ることができるでしょうか?

中島 高野連のようなボランティア頼みの事業を一般の企業が展開するのは無理があるでしょう。中小企業であればなおさら難しいと思います。しかし、中小企業こそ高校野球のように付加価値によって儲ける発想は重要です。

 高校野球の付加価値とは「高校生らしさ」です。観客は興業スポーツとしての野球を観にきているのではなく、高校生たちの一生懸命な姿を観ることに金や時間を割いています(※)。真っ黒に日焼けした肌に、坊主頭、礼儀正しく頭を下げる姿に、スポーツマンシップに則った言動。『高校野球の経済学』の中では、高校野球のことを「重要無形文化財」と表現しましたが、今どき他では見られない「高校生らしさ」は他には変えがたい価値があるのです。

(注:商業性を排除した高校野球の場合は、金はプレイヤーや監督、球場関係者ではなく、その周辺に落とされている)

《大川祥子/ライター》

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