「高校野球」はなぜ、日本最大の人気コンテンツになりえたのか? 画像 「高校野球」はなぜ、日本最大の人気コンテンツになりえたのか?

インバウンド・地域活性

 今年5月に出版された、中島隆信さんの『高校野球の経済学』(東洋経済新報社)が評判だ。高校野球はなぜ、長きに渡って日本人の心をつかんできたのだろうか? そのシステムの不思議を経済学の視点で分析したのが本書である。

 昨日、開幕した「全国高校野球選手権大会」はなんと今年で98回目。もはやスポーツ分野での日本最大の人気コンテンツといっても過言でないだろう。しかし、高校野球の仕組みはどう考えても不合理である。にもかかわらず日本に不可欠な存在であり続けている。それは中小企業経営のあり方に似ているとはいえないだろうか。中島さんが教鞭をとる慶應義塾大学にお邪魔して話を聞いた。

■非効率、不合理。そして非商業性が継続の秘密

――中島さんは『高校野球の経済学』の中で、高校野球がいかに非効率的で不合理なコンテンツであるかをさまざまな角度から分析し、それゆえに国民的イベントになったという趣旨の内容を書かれていました。この内容は、何か中小企業の経営に役立つのではないかと考えています。

中島 そうですね、経営のためのヒントはあるでしょう。本にも書いているのですが、そもそも野球は非効率的で不合理なスポーツです。選手のほとんどは動かないうえ、球場は広く、制限がないため試合時間が異常に長くなることがあります。バッターボックスでの判定は審判の主観によるところが大きく、選手は審判のクセを見抜きながら投球や打撃をしなければならなりません。

 そんなスポーツがなぜ日本中の注目を集めることになったのかといえば、もともと学生たちの遊びから始まったからです。野球は、大学や大学予科の学生たちが好んで興じる文化的なコンテンツでした。学生の帰省とともに全国に広まり、やがて各地の学生たちを夢中にしたのです。そこには当然、興業スポーツとしての市場価値はありません。そしてこの「非商業性」が、高校野球を国民的人気コンテンツにのしあげるための布石になりました。

 いうまでもなく、プロ野球と高校野球の一番の違いは商業化されているか否かです。高校野球の非商業化は公益財団法人日本高校野球連盟(以下:高野連)によって徹底されており、選手や監督に金が払われないことはもちろん、審判はボランティア、甲子園使用料や放映権は無料、観戦料金は格安(外野席は無料)と、最低限の運営費を除けば金銭はほとんど動いていません。それどころか企業の宣伝になるのを防ぐため、ブランドロゴの入ったユニフォーム等の着用まで禁止しているのです。

 その理由は、高校野球が教育の一環として行われている点にあります。健康な心身を育成するための野球は「高校生らしく」実施されなければなりません。非商業主義を貫いた結果、高野連は夏の盛りにひたむきに野球に打ち込む「理想的な高校生像」を作り出し、見世物として観客に提供することになりました。

 高校野球の観客のニーズは今どき珍しいほどの「高校生らしさ」全開の舞台です。スターによるスーパープレーではありません。朝から晩まで灼熱のグラウンドに立つ姿に胸を打たれる。強豪校では4000時間ともいわれる時間をつぎ込んで練習し、一発勝負のトーナメント戦に挑む様子に感動する。徹底して磨き上げられた「高校生らしさ」に心を震わせることに価値を見出しているのです。

《大川祥子/ライター》

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