いま「従業員持株会」が注目されるワケとは? 画像 いま「従業員持株会」が注目されるワケとは?

制度・ビジネスチャンス

 東京証券取引所による上場企業へのコーポレートガバナンス・コード適用から1年。社員が勤務先の株を購入するための「従業員持株会」の存在が、再び注目を集めている。コードは上場企業同士による株の持ち合い解消を促しており、新たな安定株主確保策として持株会が再評価。持株会の運営を受託する野村証券によると「持株会に関する社内セミナーの開催依頼がじわり増加傾向」だという。


 持株会は社員が自社の株式を購入するための組合。定期・定額購入する仕組みなのでインサイダー取引には抵触しない。社員の購入額に対し、一定額の奨励金を支払う制度を導入している企業もある。企業・社員の双方にメリットのある制度だが、社内の“組合活動”に抵抗を感じる若手社員が増えたこともあり、加入率は年々低下していた。

 ところが足元で、その潮目が変わりつつある。昨年始まったコーポレートガバナンス・コードで、株主対話の強化や持合株の解消が促されていることもあり、企業にとって長期株主の獲得が従来以上に重要となった。

 そこで事業内容を理解した上で株を長期保有する持株会に再注目。社員にとっても銀行預金の低金利が続き年金制度への不安が高まったことで会社から支援を受けつつ長期資産形成できる持株会の利点が再確認された。

 持株会の加入率を上げたい企業は、運営を担う証券会社に依頼し、持株会の意義やメリット、リスクを説く社員向けセミナーを活発に開催。上場・非上場企業あわせ約2000社で運営を担当する野村証券にも、講演依頼が多く寄せられているという。

 ただ、抜本的な加入率向上には企業自体の取り組み強化が重要だ。社員の加入率が90%というユニ・チャームは、従来拠出金の10%だった奨励金を12%に引き上げた。社員の拠出金の上限も2万円から10万円に拡大、インターネットでの申請受け付けなどの工夫を施し、加入率上昇につなげた。ウェブで自分の持ち株数がいつでも確認できるため「社員の自社株への意識が高まっている」(ユニ・チャーム)という。

 伊藤忠商事も15年夏から奨励金の引き上げを行い、54%だった加入率を77%(16年2月時点)まで伸ばした。奨励金は、従来は拠出金の5%だったが10%に改めた。かつて持株会に加入していたが現在脱退している社員の再加入も認めるようになった。同社持株会の西川大輔理事長は「経営への社員の関心を高めたいと考え、施策を強化した。低金利時代に10%の奨励金が出るため、社員から好評を得ている」と語る。

 伊藤忠商事の岡藤正広社長は「(持株会を通じ)役員・社員が経営者としての視線を共有しつつ業務遂行すれば、他社にとって脅威であり、真似のできない新たな強みになる」と指摘する。長期株主の増加だけでなく社員の意識改革も実現すれば、持株会の意義と価値は自然と高まることになる。
(文=鳥羽田継之)

「従業員持株会」新たな安定株主確保策として注目されるワケ

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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