みんなで話そう―看護の出前授業! 画像 みんなで話そう―看護の出前授業!

ライフ

静岡県立裾野高等学校

 「看護師になって5年目の頃に出会った患者さん。膀胱がんが骨に転移し、痛みが激しく苦しい状態が続いていました。夜勤の時に『痛いので何とかしてほしい』と頼まれたのですが、その患者さんは少し前に痛み止めを使ったばかり。連続して投与することはできません。そこで少しでも楽になってくれたら…。と、お腹を温め背中をさすってあげたところ、少し落ち着いたのか『どのくらい苦しいのかは患者本人にしかわからない。あなたたち看護師はもっと患者のことを理解する努力をして欲しい。こうやってそばにいてくれることも大切なことなんだよ』と感謝されたことがありました」―。と、当時を思い出して涙を浮かべながら語る、講師役の現役看護師・裾野赤十字病院看護部長の櫻井真理子氏。受講する生徒は全員が真剣な面持ちで耳を傾ける。こうした「看護の忘れられない思い出」以外にも「看護師を目指したきっかけ」や「看護のやりがい」「看護師の働く場所」「看護職を目指すなら」「受験準備をするなら」などなど櫻井講師の話は、具体的に受験をするところまで掘り下げていく。

命をつなぐ・支える看護の仕事
 受講する生徒たちは静岡県立裾野高等学校(大石広和校長、生徒数580人)総合学科の1年生18人。授業枠はキャリア教育「産業社会と人間」で「この授業は生徒全員が入学年次(1年生)に学習することになっていて、その目的は自己の生き方を探求させ、職業選択に必要なコミュニケーション能力を育成することです」と同校。職業観の育成や進路の実現という観点から、今回、医療現場で“命”と向き合う現職看護師が講師となって、いのちの大切さや看護職の仕事、医療現場における体験や仕事の本質などを伝える講話・体験学習=「みんなで話そう―看護の出前授業」を導入した。その第1回目の授業、1年生対象の「看護の仕事 命をつなぐ・支える看護」の模様だ。
 これは公益社団法人 日本看護協会と全国32府県看護協会、日本教育新聞社との共同事業で実施されているもので、普段は病院などで働く現職の看護師、保健師、助産師を中学校や高等学校に派遣して、経験に基づく講話や具体的な看護技術体験をしてもらうもの。同校のように「キャリア教育の一環として実施したい」や「命の大切さについて考えさせたい」―などそれぞれの学校の要望に応じたプログラムを立案し、授業を展開している。

病院以外に広がる「看護」の仕事
 講話はまず櫻井氏が看護師を目指したきっかけから始まった。「みなさんと同じ高1の時に漠然と人の役に立つ仕事につきたかった。やりがいのある仕事で安定した職業だと思った。女性でも管理職になれる可能性がある。奨学金制度があったなどの理由で看護職を目指しました」
 冒頭の思い出以外にも「救急センター実習で出会った脳出血によって言葉が出ない、身体が動かない“閉じ込め症候群”という患者さんの受け持ちになって、ご家族と一緒に支援するなかで、生きることをあきらめない大切さはもちろん、その支えになることがどんなに大変なことかを知りました」と、忘れられない経験について語る。
 さらに看護職の働く場所が病院や医院、診療所といった医療施設だけでなく、健康管理に関する健診センターや行政関係の職場、介護福祉関連施設、訪問看護ステーション・介護支援センター、看護教育施設・学校・保育所など広がっていること。(1)看護大学・看護専門学校への進学(2)国家試験合格(3)就職といった、具体的に看護職を目指すための情報や専門看護師や認定看護師といった看護師として経験を積み、スキルアップすることで得られる資格などについて詳しく説明していく。

「手」で「見」て、護るのが看護の本質
 また看護の「看」という字を分解し「これは『手』と『目』。つまり、手で触って目で見て護るのが『看護』の本質。ですから看護師って人間の命に関わる仕事ですが、五感(時には第六感)すべてを使って看て護ると同時に知識・技術、さらには人間性も鍛える必要がありますし、何よりも強い責任感を持ってしなければならない仕事。加えて、体力勝負の場面も多々あって『何となくいい仕事かな?』では続かない仕事です。興味のある方は、それを理解した上で頑張っていただきたい」とエールを送って終了した。
 「講師の先生が昔を思い出して涙を浮かべる…。現役の看護師さんならではの迫力でした。生徒たちも何か感じたことがあったと思います」と勝間田久美子教諭。例えば同校の卒業生で看護師として第一線で働いている先輩を講師に招き、生徒たちにとって身近な体験を中心とした講話をしてもらうなど、2年次でも看護に関する同様の授業を行いたいという。
日本教育新聞

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