建設キャリアアップシステム、誰のためのものなのか? 画像 建設キャリアアップシステム、誰のためのものなのか?

人材

 ◇誰のためのシステムか合意必要
 建設業界では、建設キャリアアップシステムの稼働に期待が集まっているが、元請業者の不安は必ずしも拭い切れてはいない。背景の一つには事業の規模の違いがある。
 全国規模で事業展開する大手・準大手ゼネコンなどが手掛ける超高層ビルのような大規模工事の現場には、1日に1000人単位の作業員が出入りする。これに対し、元請業者のほとんどを占める地域建設業者の平均的な現場は「せいぜい数十人。顔の見える範囲の下請業者、作業員と日々仕事をしている」と、全国建設業協会(全建)や全国中小建設業協会(全中建)の幹部は指摘する。
 生産労働人口が減少する中、処遇を改善して技能者を確保しなければならない現状は企業規模を問わず同じだが、対応は異なるのが現実だ。
 作業員の出入りが多い現場を管理する元請業者ほど、保有資格や社会保険加入の確認、入退場管理といった労務管理の効率化は切実な問題。システムによって「技能と経験に応じて人員を配置し、生産性を高め、品質を確保したい」(大手ゼネコン労務担当者)との声は多く、システムへの期待度は元請業者の経営規模に比例して高くなる。
 会員が大手・準大手ゼネコン主体の日本建設業連合会(日建連)は15年1月に「社会保険加入促進要綱」を決定した際、技能者の社会保険加入の有無を確認できるシステムの整備を国に求めた。「万感の思い」。労務管理の効率化などが期待できるシステムの構築が始動したことに、日建連の幹部はそう胸の内を明かし、開発費負担も含めて早期稼働を後押しする姿勢を見せる。
 一方の地域建設業者。技能や経験に応じた処遇改善の必要性は「会員企業もよく理解している」と全建のある幹部。それでも「顔の見える生産体制」の下で下請業者や技能者の情報を把握できている中、「相応のメリット、インセンティブがないなら、システムへの参加は受け入れ難い」と声を上げる地域建設業者は少なくない。全建の近藤晴貞会長は「積極的とは言えない」と会員企業の認識を代弁し、「分かりやすいメリット」の提示を求める。
 優秀な職長や下請業者を処遇などの面で優遇する元請業者は増えているが、下請代金の一律アップには否定的な考え方が多いことも、システム導入に対する消極姿勢の一因とみられる。
 基本計画書には、技能者の情報を「本人と雇用事業主が同意した場合は他の事業者も閲覧できる」と明記された。開示範囲は限定されるが、有能な技能者とその事業主の移動が活発化し、生産力が低下しないかと危惧する元請業者は多い。技能者はより待遇の良い下請業者に移籍し、下請業者はより好条件の元請業者に得意先を変えるのが処遇改善の近道。これに対応できない元請業者は生産力を維持できなくなり、市場から淘汰(とうた)される可能性もある。そんな不安は日建連の会員企業にも少なからず存在する。
 処遇改善は、適正な利潤を得て事業主が講じる措置であり、システムはそのツールに過ぎないが、「(業者や技能者の参加が)広がるほどメリットが出る」(谷脇暁国交省土地・建設産業局長)のも事実。だからこそ導入への業界全体の賛同が欠かせない。誰のためのシステムか-。その整理と元請業者の認識を一致させなければ、不安は期待には変わらない。

建設キャリアアップ-官民連携のシステム開発・中/生産力への影響に懸念の声

《日刊建設工業新聞》

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