【田舎にもっと外貨を!:2】日本中に自分の故郷を作るプロジェクト 画像 【田舎にもっと外貨を!:2】日本中に自分の故郷を作るプロジェクト

インバウンド・地域活性

【記事のポイント】
▼地方の魅力を伝える場所を設け、お金ではなく人を招きよせる
▼地域の住民を巻き込み、継続性のあるコミュニケーションを

■人口減少日本一の秋田に人を呼ぶ

 年貢を払えば、誰でも村民になれる……。農家の人手不足、地方からの人口流出が問題視されて久しいが、一風変わったアイデアでこの問題に風穴を開けそうな事業が始まっている。

 ここで言う“年貢”とは、いわゆる年会費のこと。村民=会員は都市部で開催される“寄合”という名の飲み会に参加したり、ふと自然が恋しくなったときには田舎へと“里帰”り。古民家を改装した宿泊施設を利用し、地元の人たちと交流できる。「東京出身で田舎がない」という若者、「子供に気軽に田舎体験をさせたい」というファミリーの間で人気だ。

 このユニークなプロジェクト「シェアビレッジ」の仕掛け人は、秋田米をネット通販し、生産者と消費者をつなぐ事業「トラ男(トラクター×男前)」のプロデューサーでもある株式会社kedamaの代表 武田昌大氏。その狙いは、やはり地方における人口流出を食い止めることだった。

「出身地秋田を元気にしようと始めた『トラ男』ブランドは好評で、他県から秋田へお金は入りましたが、人は増えなかった(笑)。秋田は日本一人口減少が進んでいるので、秋田を元気にしていくには人に来てもらうことが必要と感じたんです」

■人集めのキーは寄合、という名の飲み会

 シェアビレッジは武田氏とある古民家との出会いから始まった。築133年の趣ある茅葺きの家屋に、土間、かまど、囲炉裏など、日本の原風景がそのまま残っている。オーナーが手入れをしていたため状態は良好だったが、維持が大変で、近々取り壊す予定だった。

 秋田に人を集める手段として田舎体験を想定していた武田氏にとって、それは絶好の機会となった。古民家がある五城目町の町村という集落は、田舎の自然を感じるには絶好のロケーション。とはいえ、宿泊施設としては不足の設備もあったため、まずは屋根を補修し、水回りの整備を行ったという。

「田舎体験と言えども宿泊施設ですから、お風呂やトイレは若い人に抵抗なく使ってもらえるように新しい設備にしました。お風呂はめちゃくちゃキレイですよ」

 その上で、武田氏はこのプロジェクトのターゲットを“都心に住む若者”と想定した。彼らを呼び集めるには、単に田舎ならではのイベントを開催するような一過性の集客では続かない。田舎は田舎のままでよく、そこの住民とつながりを持つことで遊びに行きたくなるという構造を模索した。その結果として生まれたのが、“寄合”と“里帰”だったという。

 こうした武田氏の思いは今大きな成果を見せている。15年5月に町村の古民家をオープンして以来、週末はほぼ満室状態に。村民は約1600人に達した。そのうちの900人が関東圏の住民で、東京在住が一番多いという。年齢的には20代後半から30代前半が中心。これも、武田氏の狙い通りだ。

 なお、集客については寄合が大きなポジションを占めている。ファミリー層は休日を利用した気軽な田舎体験としての里帰りがメイン。しかし、主な客層となる若者層は、寄合で村民同氏のコミュニケーションを楽しんだ上で、里帰りするというパターンが多いという。

 寄合は毎月都心部で開催されており、年齢や職業、出身地などは全てバラバラ。毎回20~30人の村民が集まるが、知人を連れてくることも多く、それがシェアビレッジの宣伝を兼ねている。当日は里帰りの経験が面白おかしく語られるので、「じゃあ今度一緒に里帰りしましょう」と仲良しになる村民も多いとか。ネット経由で五城目町と生中継し、里帰り中の村民や地元の人と直接話をすることもでき、里帰りの心理的ハードルをぐっと下げている。

 その上で、“トラ男”のプロデューサーとして武田氏が地方講演を行うことも、良い集客になっているようだ。新聞、雑誌、テレビなどのメディアにも積極的に出演し、村民を増やしている。シェアビレッジの宣伝において、武田氏の活動が占めるウェイトは大きく、講演の日のうちに募集を集めるほど効果も高いようだ。

《板谷智/HANJO HANJO編集部》

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