改正建基法、効果は未知数で模様眺めも 画像 改正建基法、効果は未知数で模様眺めも

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 2014年5月に成立した改正建築基準法が6月1日で完全施行された。一連の改正事項のうち、最後に施行された項目の中で大きな注目を集めているのが、大規模な既存不適格建築物の増改築を容易にする規制緩和規定だ。特に、00年の法改正でいったん削除された「旧38条」に基づく大臣認定で建設された既存不適格ストックの増改築が進むかどうかが焦点。規制緩和という「救済策」の効果への期待がある一方、「当面は模様眺め」との声も出ている。
 国土交通省は、大規模建築物の増改築規制を緩和した施行令とその適用要件などを定めた告示を1日付で施行した。
 旧38条は、建築基準法令では想定していない革新的な設計や構造方法、材料、工法などの採用を、個別案件ごとに大臣認定で特例として認める制度を定めていた。国交省によると、全国に約3000棟ある超高層ビルのうち1990年代までに建てられたすべてのビル(推計1500棟前後)を含む大規模建築物の大半が「旧38条認定物件」という。
 これらのストックは旧38条の削除に伴い既存不適格建物となり、増改築や用途変更が難しくなった。部分的な増改築や用途変更でも現行法規が遡及(そきゅう)適用され、既存部分も最新の基準に適合させるよう求められるケースが多い。改修工事が建物全体に及べば、想定を超す多額の費用と長い時間がかかるだけに、多くの建物所有者は二の足を踏む。
 国交省がストックの再生・活用に向けて規制緩和にかじを切った背景には、日本経団連からの提言など経済界からの強い要望があった。
 規制緩和のポイントは2点。1点目は、更新期を迎えつつある多くの旧38条認定物件で問題になる防火・避難関連の構造・設備に関する規制の合理化だ。
 防火関連規定の緩和は、3階建て以上のスタジアムなどの増改築が念頭にある。施設内に消防車両の進入や消防活動に必要な開口部、グラウンドなどの広いスペースを確保できていれば、消防用の非常用進入口を設置する義務をなくした。
 避難関連規定では、屋内避難階段の設置基準を見直した。従来は高層階から地上階への直通階段でなければならなかったが、いずれかの階で接続通路を設ければ、人工地盤や屋上広場につながる屋外避難階段も避難階段として認める。
 もう一つのポイントは、超高層ビルの増築に特化した規制の緩和。高さ60メートル超の超高層ビルで、小規模な増築でもビル全体に構造性能評価が義務付けられていたが、増築部分と既存部分が構造上分離できれば、既存不適格のまま増築ができるようになる。ビルの足元での小規模な商業施設などの増築や、竣工後に開通した地下鉄駅との連絡通路などが設置しやすくなるとみられている。
 国交省は、今回の規制緩和が実際に適用されるケースとして、小規模で部分的な増改築をイメージしている。旧38条認定ストックの全面的な改築や大規模な増築を行うケースに対しては、今回の法改正で以前とほぼ同じ内容で復活した「新38条」に基づく大臣認定で対応するルートも用意されている。
 新たな規制緩和措置が施行されたことで今後は、新規定を利用した増改築の動きがどれだけ出てくるかが大きな注目点となる。民間のデベロッパーなどの間では、増改築がすぐに具体化する動きはなく、法令の運用状況を見て対応を決めるところが多いようだ。ゼネコンの設計技術者からも「実際に法令の運用が始まってみないと増改築に与える本質的な影響が見えてこない」との声が出ている。
 《増改築規制緩和の主要項目》
 ■旧38条認定建築物
 △非常用進入口の設置規定合理化=スタジアムなどの内部に吹き抜けなどの空間があらかじめ一定規模以上確保できていれば、非常用進入口設置を不要に
 △避難関係規定の合理化=1棟の建築物にある二つ以上の構造が防火上の支障を相互に来さない場合、既存部分の改修を不要に
 △排煙設備等の性能規定化=告示で定めた構造方法に限定している非常用エレベーターの乗降ロビーなどに設ける排煙設備について、新たに大臣認定を受ける設備も追加
 ■超高層ビル(旧38条認定含む)
 △既存不適格のまま構造上一体となる地下連絡通路やイベント広場などの付属棟の増改築を可能に。

改正建基法が完全施行/既存不適格の増改築に「救済策」/効果は未知数、模様眺めも

《日刊建設工業新聞》

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