建設キャリアアップ、客観評価で技能者の処遇改善へ 画像 建設キャリアアップ、客観評価で技能者の処遇改善へ

人材

 ◇品質確保にも大きな役割
 「建設キャリアアップシステム開発準備室」は、東京・虎ノ門にある建設業振興基金の事務所の一角に設けられている。
 室長を務める振興基金の長谷川周夫経営基盤整備支援センター人材育成支援総括研究部長を筆頭に、日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)、全国建設労働組合総連合(全建総連)から出向する8人のメンバーで構成。国土交通省の担当者とも日々打ち合わせを重ねながらシステム開発をめぐる課題を一つ一つ解決する作業を進めている。
 8人のほか、業界を代表するメンバーによる開発検討チームも組織。ゼネコン、専門工事とそれぞれの業界の意見を準備室に伝え、システム開発に反映させるようにしている。
 チームに参加する後町建設工業の後町宏幸社長(日本型枠工業協会)は、週2回の準備室通いを続ける。所属する団体やゼネコンの協力会の中心メンバーでもあり、社業も忙しいが、「就労履歴を蓄積し、能力を客観的に評価するシステムは、技能者の処遇改善につなげるためにも絶対に必要」との信念から、専門工事業の意見を準備室に伝える役割を自らに課す。
 国内外の職人事情に詳しい蟹澤宏剛芝浦工大教授は、官民が連携してつくるシステムについて、「技能者の本人確認を行い、ID番号を付与することにこそ大きな意味がある」と指摘する。登録機関が付与するIDによって「この人は業界が認めたプレーヤー」と位置付けられることは、現場の大小にかかわらず、最前線で働く技能労働者のモチベーション向上につながる。言われて久しい「技能労働者の社会的地位の確立」にも寄与するシステムが、結果として建設業界への入職を目指す若者を増やすことにもつながるとみる。
 マンションの瑕疵(かし)問題など、たびたび取り沙汰される施工品質をめぐる課題に対しても、現場で働く技能労働者の情報を蓄積したシステムが有効に機能するとみられている。本人確認がしっかり行われ、技能レベルに応じて色分けされたカードが用いられることは、発注者に対して施工品質を客観的に証明することにもなるからだ。
 「現場で誰が施工に従事した物件か」。それを開示できるようになれば、発注者にとってもメリットは大きい。蟹澤氏は「これが受発注者間のフェアトレード(公正取引)につながる」と話す。
 改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)は、品質確保について「受注者のみならず下請負人およびこれらの者に使用される技術者、技能労働者等がそれぞれ重要な役割を果たす」と条文にうたった。
 建設業法は、品質への責任を元請が負う法体系だ。発注者責任を問う改正公共工事品確法の中で初めて、「技能労働者も(品質確保に)責任を負うことがはっきりした」と内田俊一建設業振興基金理事長は指摘する。同法の対象は公共工事に限られているものの、しっかりとした技能を持った人材をいかに的確に現場へ配置するかが問われるようになった。
 開発が緒に就いたばかりのシステムだが、これからの建設業界で果たす役割は小さくない。
 (編集部・「建設キャリアアップシステム」取材班)

建設キャリアアップ・官民連携のシステム開発・下/客観評価で技能者の処遇改善

《日刊建設工業新聞》

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