ドーナツ型TBM、産学官で研究開発が進む 画像 ドーナツ型TBM、産学官で研究開発が進む

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 山岳トンネルの掘削に使われるトンネルボーリングマシン(TBM)工法。国内では早くから導入されたが、地質の複雑さが壁になって普及はいまひとつなのが実情だ。その対策として、全断面型TBMのカッターヘッドの中心に開口部を設けた「ドーナツ型TBM」の実用化に向けた研究開発が産学官の連携で進んでいる。開口部から切羽の状況を目視で確認できるため、複雑な地質変化に対応しやすく、掘削スピードを大幅に高められるメリットがあるとされている。(編集部・田村彰浩)
 日本の山岳トンネル工事では、現在一般化しているNATMよりTBM工法の方が早く導入され、1960年代終盤には高速施工技術として使われるようになった。ただ、国内の施工件数はこれまでに160件と少なく、しかもその大半は小口径断面での施工だ。日本の地質は複雑で、不良地山が断続的に出現することが多い。施工中に掘進がたびたび困難になることもあり、高速施工の利点を生かし切れないことが普及を妨げている要因の一つとされる。
 こうしたTBM工法の課題を克服するため、2011年度に先端建設技術センターに設置されたのが「ドーナツTBM工法施工検討会」だ。同センターとゼネコン6社(大林組、鹿島、株木建設、熊谷組、清水建設、大成建設)、元京大大学院教授の小山幸則博士で構成。座長を小山氏が務め、中心部の開口径やカッターの配置、掘削工、支保工などの施工方法、機器の構成を検討してきた。
 15年度には、国土交通省の建設技術研究開発助成を受け、実用化に向けた検討を一段と加速。「ドーナツ型TBMを活用した新たな山岳トンネル工法の開発」をテーマに、2カ年計画で掘削実験とトンネル全体の施工システムの検証が行われてきた。
 ドーナツ型TBMのポイントになるのがドーナツの形状だ。発案者の一人である株木建設の武田光雄博士によると、「TBMでは単円で回転している中心は動いていないため、その中心を掘ることはそもそも合理性に欠ける。硬い岩盤であればその差は歴然」という。
 全断面型TBMの最大の課題は、不良地山に遭遇した際に高速性も経済性もそがれてしまうことにある。ドーナツ型TBMは、カッターヘッドの中心部に開口を設けることで、不良地山に対する施工リスクを事前に低減し、高速性を確保するのが特色だ。
 開口部から切羽を常に目視できる上、100~150メートル前方の探査ボーリングにより、コアの採取や涌水量の確認も可能。破砕質の地山では、掘進の障害になる礫(れき)などを開口部から取り込むこともできる。切羽が泥流した場合は、開口部から薬液注入などで地盤を改良し、脆弱(ぜいじゃく)帯が長い区間ではNATMも併用できるという。
 今年2~3月にモルタル供試体を用いて掘削実験を実施。1平方ミリ当たり55ニュートン(N)の供試体の場合、ドーナツ型は全断面型に比べ約4割速いスピードで掘削できることを実証したという。
 「同じ掘削力(トルク+スラスト)であれば、全断面型よりも速い掘削速度が得られる。掘削力や反力をより小さくすることが可能になり、軟弱層への対応上、有利だ」と武田博士。モルタル強度レベルで40%程度の掘削時間効率が得られることから、実際の岩盤では摩耗量の低減が期待でき、カッターの取り替えに必要な経費の削減効果も大きいとみている。
 ドーナツ型TBMは世界でも開発された例はなく、同検討会では日本のほか、米国、中国、インドネシアで特許を取得。ドイツ、ベトナム、インド、ブラジルで特許を申請中という。
 開発を推進する国交省の産学官テーマ推進委員会で委員長を務める東京都立大(現首都大学東京)名誉教授の今田徹博士は、「わが国のTBM開発は、欧米に大きく後れを取っている。このドーナツ型TBMが日本発信の技術に育つよう、国交省も開発助成をしている。早く実用化して技術を確認したいと考えている」としている。

ドーナツ型TBM、産学官で研究開発進む/掘削効率4割向上確認/山岳トンネルに照準

《日刊建設工業新聞》

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